ポケモン(長編)ダンデ

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「凄いな、キバナ!
強そうなトレーナーがたくさんいるぞ!」


「…今日はバトルしに来たんじゃねぇだろ…
…はしゃぐなよ…」


わくわくしながら黄金の瞳をキラキラと輝かせるダンデに俺様は溜息を吐いた
…俺様が見立てた正装の上にキャップを被ろうとした時も盛大に溜息が出たが…

今、俺様とダンデは合同会議を終えて、親睦パーティが開かれる会場に足を運んでいる

…周りを見渡せばテレビやネットで見たことがある、他地方のチャンピオンやジムリーダー…
更には有名企業のロゴがいくつか壁に飾られており、ただの親睦パーティではないと俺は悟る

…企業側は有名な人材に声を掛けてスポンサーになるつもりだ…
チャンピオンやジムリーダー側は他地方のレベルを伺ってんだろうな…

ん…?
…あのリボン…見覚えがあるな…

確か…ハナのコンテスト映像で…

思考を巡らせていると会場の灯りがゆっくりと暗くなっていく…
そしてステージに向けて眩いスポットライトが集まった

会場全体がステージに注目すれば、銀色の美しい頭髪を持つ男性が堂々と開催のスピーチをし始める…

アイツは…さっきの会議に居た奴だ…
随分、優男そうな印象だが…
…顔はめちゃくちゃイケメンだな

漢!って感じのダンデとは正反対に上品で落ち着いてて悪い印象はしねぇ

それがデボンコーポレーションの御曹司、現ホウエン地方チャンピオンのダイゴに対する俺様の印象だった…


スピーチが終われば、俺様とダンデは会場を周りながら、色んな人間に挨拶やら世間話やらとフォーマルな応対をしていたんだが…
…ダンデが急に黙り込んだかと思えば、剣幕を隠し切れてない顔をしながらズシズシと歩き出して行く!


「おい、ダンデ!
お前、何処に行くん…だ……えっ?!」


こんな所で迷子になられるは御免だと俺はすぐにダンデを追い掛けて、腕を引っ張ったが…
…ダンデの目線の先を見て俺様もダンデと同じような顔付きに変わる


「…なぁアンタ…
…誰の許可を得てこの女を連れてんだ?」


目に入って来たのは…
…さっきのダイゴという男がハナの腰に手を回して、エスコートしながら優雅に談話している光景だった…

すぐにハナの手を引っ張って、俺様の胸の中に閉じ込めれば、俺様より背の低いダイゴを圧のある目で見下ろす


「…急にパートナーと居る女性の手を引っ張るなんて…
紳士がすることじゃないと思うよ
…ナックルシティのジムリーダーさん?」


挑発したような目線を返してくるダイゴの姿を見て、俺様の額に脈が浮き上がる感覚がした


「…俺様の事を知ってんのにコイツと俺の関係は知らねぇのか?
…もう一度、言う…!
誰の許可を得てハナに触れてやがんだ…!」


ギリっと歯を噛み締めた瞬間、ハナが俺様の顔を隠すように手のひらを押し付けてくる…!


「だ、ダイゴさん…!
ごめんなさい、こちらの方々と少しお話があるので…!」


「…キミがそう言うなら仕方ないね…
でも…出来るだけ早く戻っておいで」


そう言って器用にハナに向かってウインクするキザな男にカチンときたが…
…俺様よりも怒りを表している男が横にいた…


「…ホウエン地方のチャンピオン、ダイゴだったな…
友人が失礼をしてすまない、俺はガラル地方のリーグ委員長をやっているダンデだ」


「気にしないでくれ
…10年もガラルでチャンピオンに君臨し続けた通称、無敵のダンデくん
お会いできて光栄だよ…
…その鋭い目さえ向け無ければだけど」


一触即発しそうなダンデとダイゴにハナがハッとして2人の間に入ろうとしたが…
俺様が慌ててハナを押さえつけた

…どうしてハナがこんな所に居るのか詳しい話を今すぐ聞きてぇとこなんだが…今は駄目だ

だってよ…ダンデがマジギレしてやがる…!
あの顔を見たら俺様の怒りが引っ込んだわ!

ダンデは滅多に怒らねぇんだが、静かにキレるタイプだから後が怖ぇんだよ…!汗

ハナは確保したし…
俺様は今すぐこの場から去りたい…
…つーか逃げ出してぇ…


「どこで出逢ったのかは知らないが…
彼女は俺たちの大事な人なんだ
…気安く触れないで頂きたい」


「それはすまなかったね
けど…彼女は今、このボクのパートナーなんだ
…ねぇハナちゃん?」


「…はい…その通りです…
ダイゴさん本当にごめんなさい…
…私の兄が失礼な態度を取ってしまって…」


「……え?
…そちらの背が高いジムリーダーは…
…ハナちゃんのお兄さんなのかい…?」


ハナの言葉を聞いた途端、ずっと余裕そうな表情を浮かべていたダイゴが目を丸くした
…そして困惑した顔で俺様を見てくる…


「だから言ったじゃねぇか
…誰の許可得て俺様の妹に触れてんだって!」


「キバナ!!アンタ、妹だなんて一言も言ってなかったわよ!?
それにいきなり突っかかって行くなんて…!
ダイゴさんに謝ってっ!!」


ハナに怒られれば、先程の自分の発言を脳内で思い返した
…あ…確かに言ってねぇわ…汗


「…悪かった」


「い、いや…ボクの方こそ…!
挑発的な態度だった、本当にすまない…
…場所を変えて話そう
ここは…人目が多過ぎるから…」


確かに華やかなこの場に似合わない険悪な雰囲気を醸し出していた俺たちを、ヒソヒソと周りにいた人間たちが不審な目で見ている…

だから俺たちは大人しく、ダイゴの後について行って別室に移動した…
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