ポケモン(長編)ダンデ

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昼間の会議のときにチラッと見かけたホウエン地方のチャンピオン…
…あの時は気にも止めてなかったが…

何故この男はハナの腰を抱いて、まるで自分の物のような扱いをしているんだ!?

パーティ会場でハナとダイゴの姿を見た時は、すぐにでもリザードンを繰り出してしまいたい衝動に駆られたが…
…何とか必死に抑え込めば、俺は2人の前に立ち塞がった

ハナに触れないでくれと言おうとして口を開いたが、俺よりも身体の大きいキバナが先に手を出してしまう…!

…キバナとダイゴのやり取りを見れば、明らかに此方の態度が悪いのは分かっていたが…
俺は自分の感情を抑え切れなくて、非礼を詫びつつもダイゴの挑発的な態度と言葉に我慢ならなかった

しかし…
…ダイゴはハナがキバナの妹だと知れば、納得したような面持ちで態度を改め、別室へと案内してくれる…

そして俺とキバナは現在…
…冷や汗が止められない状態だ…汗

何故なら…ハナが怒って…
…いや、物凄く怒っているからだ…!!


「…ガラルの代表としてこの盛大なパーティに出席してるのに…!
な・ん・で・!!
その席で揉め事を起こそうとすんのよ!?
…自分の立場ちゃんと分かってんの?!」


「わ、悪かったって…」


そう言ってキバナの胸ぐらを掴み上げては、キバナと同じ八重歯をギラッと光らせるハナ…
ガルル!とまるで獣が威嚇するような顔と勢いが恐ろしい…

キバナもキレるとドラゴンのようで怖いが…
…ハナはまるで狼みたいだ…
今にもキバナの喉を噛み切ってしまいそうで…

…正直、めちゃくちゃ怖いぜ…!汗


「落ち着いて、ハナちゃん…っ!
ボクにも非があるわけなんだし…」


ダイゴが苦笑いを浮かべながらどうどうとハナをなだめる…
…が、ハナの怒りは収まらない


「ダンデくんも!!
なんであんなにダイゴさんを睨むのよ?!
彼、あなたに何かした!?」


キバナから標的が俺に変わるとビクッ!と思わず、肩を震わせた

…しかし、俺は…
ダイゴがキミの体に触れた時に一瞬、眉を寄せたハナの顔を見たから頭に血が上ったんだ…


「す、すまない…
……キミが嫌がってるように見えたんだ…」


思っていたことを口にした途端、一気に室内がシーン…と静かになった
…あれだけ怒っていたハナもまるで図星を突かれた幼い子供のような顔で動揺している…


「…ごめん、ハナちゃん…
…ボクに触れられたくなかったんだね…
…今、彼らと話してるような話し方も名前の呼び方も…もうボクにはしてくれない…
無理を頼んで本当にごめん…
…父にはボクから話しておくから…」


苦しそうな声でダイゴが言葉を並べている…
…そしてハナに背を向けて部屋を出て行こうとしていた…


「っ…待って!
…ダイゴ、私をエスコートして…!」


ハナの言葉でピタッとダイゴの動きが止まる

…そしてハナが俺を泣きそうな瞳で見つめたかと思えば、ダイゴの元へと行って自分から彼の腕に絡みついた…

…パタンと扉が閉まり、2人の姿はもう見えない
なのに…俺の頭の中にはダイゴの腕に絡みつくハナの姿が焼き付いてしまっていて…

胸が…苦しくて息が上手く出来ない…!
…体も熱くてまるで肺の中を火炎で灼かれているような感覚がする…!

悲しみと怒りがぶつかり合うような感情が押し寄せてきて、ハナとダイゴが出て行った扉から目が離せない…!


「あっ!!…思い出した…!
…アイツは数年前に…
ハナと熱愛報道されてた男だ…!!」


ハナに散々絞られて小さくなっていたキバナが突然、大声をあげた

咆哮のような大声にも驚いたが…
それよりもキバナが放った言葉が鋭い矢となって俺に突き刺さってきた…


「どーゆーことだ?!
ハナは…あの男と交際しているのかっ!?」


俺は勢い良くキバナの肩をガシッと掴んで詰め寄った
…キバナを掴んだ己の拳が、無意識に力を込めてしまっている事にすら俺は気付かない

それくらい衝撃的な言葉だったんだ…


「いてぇよ、ダンデ!この馬鹿力っ!
昔の話だっつってんだろ!?
だいたい、さっきのハナとダイゴの会話を聞けばもう破局してんのは分かるだろーがっ!」


俺の手を振り払いながら、イライラを隠しきれてないキバナが言葉を続ける


「俺様はハナがガラルを出て行っちまった日からずっとアイツを探してたんだよ!
…情報を得る為に買った雑誌の中に[ツワブキ・ダイゴ]って名前の男と熱愛報道されてた記事があったんだが…
…顔を見たことがなかったからすぐに気付かなかったんだ…!」


「ハナの…元恋人…」


…俺は昔のハナの事を何も知らない
彼女がトップコーディネーターだった事だって先週、キバナの口から聞いた…

悔しい…!
…俺の知らないハナをダイゴは知っている…

…それも恋人として過ごしていたなんて…!

嫉妬というものを感じた…
俺は言葉として理解はしていたが、実際に身を持って経験したのは初めてだった…

荒ぶる獅子のように気が立ち、眉間に寄せられた皺が自力で戻せない

…この感情は…不快だ…!


「おいっ!?
どこ行くんだよ、ダンデっ!」


気付いたら俺は走り出していた…
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