ポケモン(長編)ダンデ

□9
1ページ/7ページ


…誰か嘘だと言ってくれないか…

こんな事、ありえないだろう…ハナとキバナの中身が入れ替わっていたなんて…!

つまり…俺は今までキバナをハナだと思って接し、こんなに悩んでいたのか…?

…長年のライバルであるキバナの手を俺は何度も繋ごうとしてしまったぞ…?
…記憶から消したい…跡形もなく…泣

だが…ハナが俺を嫌って距離をとっていた訳ではなかったんだ!
それだけは本当に良かった…

…ハナに嫌われたら目の前が真っ暗になって、きっと俺は何も見えなくなってしまうかもしれないからな…

荒ぶる脳内をなんとか整理して、落ち着きを取り戻し始めた俺はチラッとキバナを…
…いや、今はキバナの姿のハナを見つめた

ソニアがカチャカチャと壊れたキバナのダイマックスバンドを弄れば、いとも簡単に修繕してみせる

…それをハナが身に付けた途端…!
ダイマックスバンドが眩しい光を部屋いっぱいに放ち出した!

光が収まれば、フラッとするキバナの姿のハナが見えて俺は肝を冷やした


「ハナ!?大丈夫かっ?!」


眩い光の中心であるハナの元へと駆け寄れば大事はないかと内心、とてもハラハラしていて気が気でなかった

キバナの姿といえど、中身はか弱い女性であるハナだ…
…俺はどんな姿であろうとハナが心配で守ってあげなくては!…と使命感に駆られていて、くたっとしているキバナの体をそっと支えた


「っ……あ?ダンデ…?
あれ…腹が痛くねぇ…?
…うおっ!?元に戻ってんじゃねぇかっ!」


…目の前では凄い勢いで立ち上がったキバナが小躍りしながら自分の体のあちこち触れ、ガッツポーズを決めている…!

その姿を見て瞬時に俺は理解した

もうキバナの体にハナは居ない!
…だとすれば…!
ベッドの上で布団に潜り込んでいるのは…


「ハナ、元に戻ったのか!?
体調は…気分は大丈夫か?!」


すぐにキバナの元から離れてベッドに駆け寄ると、布団の上からハナに触れる
…そっと布団をめくってハナの体調を確認しようとしたら…

…ハナが…目を赤くさせながらぽろぽろと涙を流していた…


「ど、どうしたんだ!?
まだ体調が良くなっていないのか?!
ソ、ソニア…!頼む…教えてくれ!
どうしたらハナの痛みを楽にしてあげられるんだっ?!」


「えっ!?
…も、もう痛みが落ち着くまであったかくするくらいしか出来ないわよ…」


どうにか痛みを和らげてやりたい俺は、必死にソニアに助けを求めたが…
同じ女性であるソニアにもこれ以上はどうにも出来ないと言われてしまう…!

オロオロと落ち着かない俺を尻目にハナは涙を手で拭って、ギロッとキバナを睨んだ


「キ、キバナ…!
アンタ、なに食べたのよ…!?」


突然の敵意を向けられたキバナはビクッと肩を揺らし、顔を怯えさせながら懸命に考え込む…


「えっ!?た、食べたもの…?
あー…朝食代わりに冷蔵庫にあったアイスを食ったな…
それとカフェでアイスコーヒーとベーグル…
…夜中に酒もだいぶ飲んじまったけど…」


「うっわ…最低…
…そりゃここまで重くなるわよ…」


キバナの返事を聞いたソニアが軽蔑したような目をキバナに向ける…
…ハナは薬の効果が切れてきたのか、肌を青白くさせて酷い顔色になっていた


「え!?俺様が食った物のせいなのか?!
わ、悪いハナ…知らなくてよ…」


「はぁ…もういいから…
…部屋から出てって…少し休むわ…」


痛みに顔を歪めながらそう言ったハナはぐったりとしていて辛そうだ…
そんなハナを見て、オロオロと情けない顔を浮かべるキバナをソニアが部屋から連れ出す

…部屋の外からは「生理に冷たい物は厳禁なのよ!悪化するに決まってるじゃない!」と説教混じりのソニアの声が聞こえてくる

冷たい物はダメなのか…
…出来るだけハナには暖かい食事を食べてもらおう…
体が冷えないように何か暖かい衣類もプレゼントした方がいいな…

…出来るだけハナの側に居たいが…
今はゆっくり休ませなくては…
…どうにかしてやりたくてもこればっかりは、俺にはどーすることも出来ない…


「…部屋の外に居るから…
何かあったら呼んでくれ、俺に出来ることなら何でもするぜ…」


そっとハナの頬を撫でながら俺も部屋を出たほうがハナがゆっくり休めるかもしれないと思い、立ち上がろうとしたが…
…ハナの小さな手が弱々しく俺の裾を握り締めていて…動けなかった


「…ダンデくんは…傍に居て欲しい…」


…潤んだ瞳で弱々しく俺を見つめるハナ…


「…もちろんだ
…ゆっくり休んでくれ…」


彼女の手を絡めるように握って小さく微笑めば、ハナが甘えるように俺にくっ付いてくる
…いつもより低く感じるハナの体温を少しでも温めてやりたくて…

…俺は出来るだけ体を密着させた…
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ