ポケモン(長編)ダンデ

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「…ハナ…このままでいいのかよ…?」


「…何が?」


「何がって…ダンデの事に決まってんだろ!」


キバナの自宅を出る直前、私を追い掛けてきたキバナが痺れを切らしたような面持ちで言葉を投げてくる

…ガラル初となるポケモンコンテストが終わった後、私の生活は一変していた

ダンデくんとキバナが2人揃って盛大にサロンを宣伝した日のような忙しさが連日続いている上に、コンテストのインタビューや雑誌の掲載依頼等で私はちっとも休む暇がない…

…ダンデくんと別れた事をキバナに話してからあのマンションにも帰らず、シュートシティから遠く離れたキバナの家まで帰っては寝泊りを繰り返しているし…


「…キバナには関係ないでしょ」


「っ…そーかよ…
それなら毎日、泣き腫らした目をして起きてくんじゃねぇ…
…見てるこっちが辛いんだよ…」


「…っ!!
…だって…私が一方的に感情をぶつけて関係を断ち切ったのよ…!?
あんなにダンデくんは支えてくれてたのに…
…昔の事なんかずっと気にして私は…!
…1番大切な彼の手を…振り払っちゃった…」


そう…私はあの容赦なく突き刺さる言葉と嫉妬の嵐に耐えられずにガラルへと逃げ帰った弱虫者だった…
…それでもポケモン達を美しくしたい気持ちは変わらなくて、ガラルでサロンを開いたのに…

…それをずっと隣で支えてトップコーディネーターではない私を好きになってくれたダンデくんを…否定してしまった

彼の言った言葉に胸を痛めたのは事実だけど…
…私と違ってダンデくんは人々からの嫉妬や憎悪を理解し、受け止めた上で頂点に君臨し続けた真のチャンピオンだった…

…あんなに王者に見合う器と純粋な優しさを持つ彼に、一方的に感情をぶつけるなんて自己中にも程があり過ぎるわ…


「…そう思うならこのままにしたらダメだ…
俺はハナの事もダンデの事もよく知ってるが…
お前らの関係は始まったばっかりだろ?
…ぶつかって傷付いたっていいんだよ…
何度でも仲直りしてもっとお互いを理解すればいいだけだぜ?
…お前とダンデは…よく似ているから大丈夫だ」


ポロポロと泣き出す私を優しく抱き締めるキバナは幼い頃、泣きじゃくる私を宥めてくれた時のようにポンポンと頭を撫でてくれる…


「似…てる?
…私とダンデくんが…?」


…キバナは何を言ってるのかしら…?
ダンデくんと似てるって…どういう意味?


「そ!お前ら似てんだよ
…だからちゃんと分かり合える
俺様が保証してやるって!」


にぱっと人懐っこい笑みを浮かべたキバナがそんな事を言う…
…慰めて貰ってる立場でこんな事を言うのは、アレだけど…


「…私とダンデくんが似てるって…
…キバナ、目がおかしいんじゃない?」


「…容姿の事じゃねぇんだけど…汗
あれだな…お前も結構鈍感な所あるよな…」


「なっ…!私の何処が鈍感よっ!?」


「フフッ…さぁな…それよりいいのか?
…時間、ヤベーんじゃねぇの?」


「え?…うっそ、もうこんな時間っ!?
い、行ってきますっ!!」


キバナの発言には腑に落ちない所があるけど…
…スマホロトムの画面を見せられ、現在時刻が目に入れば私は慌てて駆け出した


「…すげぇよな…トップに立てる人間は考える事が似てんだからよ…」


…キバナが小さく呟いた言葉は駆け出していた私の耳には届かなかった…


「おはよ、マサルくん!
…ってその子…!?」


店に入った私の目はこれでもか!というくらい大きく見開いた…!
…だってマサルくんの隣に居るのは…!


「ハナさん!おはようございます!
…すいません、驚きましたよね…
彼は僕の親友なんですけど…どうしてもサロンで働いてみたいって言って聞かなくって…」


「おはようなんだぞ!
問題ならクリアしたし、俺もポケモンサロンで働いてみたいんだぞ!」


「こ、コラ!ホップ!!
ちゃんと敬語使わないと駄目だよ!?」


ニカッと歯を見せ、眩しいくらい爽やかな笑みを向けるホップくんの姿は…
…まるでダンデくんが幼くなってしまったのでは無いかと思うほど、彼にそっくりだった…

…多少、落ち着きがないけど…汗


「えーっと…ホップくんって言うのよね?
…問題をクリアしたのは本当かしら?」


「もちろんなんだぞ!」


「だから敬語っ!汗」


私の問い掛けにニコニコと笑みを向けながら、用紙を差し出すホップくんに冷や汗を垂らしまくっているマサルくん…

…絶対にダンデくんの弟よね…?
こんなに似てるんだもの…

…間違いない気がする…汗


「…!
…凄いわね…完璧じゃない…!」


困惑しつつもホップくんから問題用紙を受け取り、目を通せば私は驚愕するしかなかった…

だって…店が前よりもずっと人気になってしまったからアルバイト募集の問題は更に難しくしてたのよ…?

…なのにまるで模範解答のような完璧な答え…

しかもマサルくんと同い年の子が解いたなんて普通に凄過ぎるでしょ…
…流石、ダンデくんの弟だわ…汗


「俺はポケモン博士になりたくて毎日勉強してるからこんなの朝飯前なんだぞ!
…じゃなかった、朝飯前です…」


「あ〜…無理に敬語は使わなくていいわよ
でもお客さんの前では気をつけてね?」


…多分、ホップくんは普段、あまり敬語を使う機会がないのかもしれない…
だって…違和感がすごいもの…汗
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