ポケモン(長編)キバナ

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俺に怒られると察したサクラはふるふると震えては下を向いていた

…その隙に医者はニコリと笑顔を向けながらサクラの腕に点滴の針を刺し直す

医者の手際の良さにサクラは反応が遅れてしまうも自分の腕に針が刺さればバタンとベッドに倒れて行く…

…点滴の刺さった腕をふるふると震わせては、貧血とは違う意味でサクラは顔を青くさせているようだった…

…さっきもそうだったが、ここまで嫌がるなんて正直、異常だと思うんだが…


「今日はこのまま安静にして頂いて明日また様子を見ましょう
頭を強打しているので検査しといた方がいいですし…」


医者の言葉に頷き、同意する

…サクラを心配そうに見ていたら医者が面会時間を過ぎても居てくれていいと特別に許可してくれた

…また逃げ出しでもしたら困るからだろうなって俺は察した
…要は見張っとけってことだろう…

医者が病室を出ていけばサクラに向かい合うように座ってジーっと見つめる


「…どうしてそんなに嫌がってるんだよ…
…ただの注射だろ?」


小さい子供なら嫌がるのも分かるのだが…
流石に呆れた俺はサクラに言った


「……ただ怖いだけですよ…
本当にそれだけです…
…迷惑かけちゃってごめんなさい…」


静かな口調でそう言えばあまり詮索されたくないようで俺様と目すら合わせてくれないサクラ

…点滴の針が刺さっている腕は今も震えている

訳がわからなくてイライラしてきちまった

…サクラの聞き分けない行動にイライラしてる訳じゃねぇ…
今も怯えちまうくらいの理由があるのに俺様に話してくれないからイライラする

…そんなに頼りにならないのか?
お前のそんなキツそうな顔…見たくねぇよ…


「…俺様にならいくらでも迷惑かけていーぜ?
…だからもうそんな顔するなよ」


サクラの震える手を握り締めてやる
…こっちを一向に向いてくれないサクラだが、泣いていることくらい顔を見なくても俺様は分かっていた


「うぅ…キバナさん…ごめんなさい…!」


俺の言葉を聞いて手で涙を拭うサクラ…


「大丈夫だから今はちゃんと休めって
…隣に居てやるから」


しばらくなだめていたら泣き疲れと体調不良からサクラは眠りに落ちていった…

しばらく眠っているサクラの寝顔を見ていたがそろそろ病院を出ないと流石にまずいよな…

…名残惜しい気持ちを抑えながら病院を後にしてジムに戻る

ジムの中は真っ暗で既に他のトレーナーたちは帰宅していた


「あー…これ今日中に終わらねーかも…」


執務室に入り、自分のデスクに置かれている山のような書類が目に入れば溜息が出てきちまう

黙々と1人で作業をこなしていたら既に時計の針は深夜を指差している…

明後日…いやもう明日か
開会式には俺様もジムリーダーとして出席しなければならない

サクラもチャレンジャーとして真新しいユニフォームに身を包んであの熱気あふれる会場に行く予定なのだが…


「とりあえず、明日の検査次第だな…」


体調の優れないアイツを無理に開会式には参加させられない…
…今は病院で休んでいるであろうサクラの事を考える

…開会式の事だけではなく朝食時に俺がした質問に様子がおかしくなった事と異常な程、注射に怯えている事がずっと俺様の中で引っ掛かっていた…

…もしかして…サクラの元いた世界で何かあったのか…?

スッゲー気になったし、サクラの事はなんでも知りたかったが…
…俺様は隣にいて安心させてやるだけだ
いつか話してくれるのを待ったほうがいい…

グッと自分の気持ちを押し込めて再び書類を処理していく
…ようやく書類が片付いたのは明け方だった…

流石に眠さの限界だった俺はそのままジム内にあるベンチに横になって寝てしまった…


「ふぁ〜…眠い…今、何時だよ…」


無理な体勢で硬いベンチに横になっていたからか、身体が痛くて起きた
あまり寝れてない俺様は寝足りなくて欠伸が出てきてしまう

半分くらいしか開いてない目でスマホロトムに手を伸ばして時間を確認した
そろそろジムトレーナー達がナックルジムに来る時間だった

今日の特訓も疎かには出来ないし、昼には一旦、ジムを抜けて病院に行きたかった為、だるい身体に気合いを入れる

それでも眠さは抜けなかったので、シャワーを浴びに行く
熱いお湯を浴びれば先程よりスッキリして目が冴えてくる

替えのユニフォームに着替えて出て来る頃にはジムトレーナー達が既に集まっていた

皆を集めては昨日、サクラが怪我をする事故が起きた為に各自に注意を呼びかけてから練習を開始する

一人一人に指導をしながらいつものように育成に力を入れたが何か物足りない…

…前まではこれが俺様の日常だったんだけどな
サクラが傍に居ないだけで俺様の身体の一部が無くなっちまったみたいだ…

サクラは今頃、検査中だよな…

俺はサクラが気になって仕方なかった
…こんなんじゃアイツが旅に出ても探しに行っちまいそうだ…

やっと午前が終わればドラゴンのようないつものパーカーを手早く羽織って早足気味に病院へ向かった…
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