ポケモン(長編)ダンデ

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あ、ありえない…!
あれだけ大量に用意したのに…!

…日持ちのしないお菓子が完売するのならまだ分かる…
けど!まさか山のように在庫があった、衣類やアクセサリー関連まで完売するなんて…!

…いくら超有名人のダンデくんとキバナが店を手伝っているからって絶対におかしいわ!


「キバナ!物品は完売よ!
在庫がもう無いの!」


店の裏から店内に戻って来れば、すぐにレジに立っているキバナに完売の知らせを伝えた


「お!やっぱりか!
アイツらが店の外でパフォーマンスし始めてよ…そしたら飛ぶように売れたぜ?」


キバナはフフッと柔らかな笑みを浮かべながら店の外を指差している…
その方向へと目線を向ければ…

…私の愛しのパートナー達が販売していた衣装を身に纏い、まるで小さなポケモンコンテストを開いているかのように街の人々に向かってパフォーマンスを繰り広げていた…

…現役の時と変わらない、あの子たちは端麗で雅やかで…
あぁ…なんて綺麗なんだろう…

その姿にジーン…と胸が震え、目頭が熱くなる

チラッと私を見ては、聡明な笑みを向けてくる自分のポケモンたち…
…あの子たちは私が懸命に店の準備をしていた事を誰よりも近くで見ていたから…

キバナやダンデくんを見て、自分たちにも出来ることを見つけて手伝ってくれているみたい…


「っ…やる気、出てきた!」


自分のパートナーたちのそんな愛らしい気遣いに感動を覚えない訳がない!
元々やる気満々だったけど、俄然、意欲が湧き出てきた私は、次々と来店するお客さんのポケモン達を綺麗にトリミングしていく…

…忙しない時間はあっという間に過ぎていき、気付けば閉店の時刻になっていた…


「お疲れ様!大盛況だったな!」


予定の閉店時間より伸びてしまったけど、なんとか初日を終えれば、真っ先にダンデくんが労いの言葉を掛けてくれる


「お陰様でね…本当にありがとう!
助かっちゃったわ!」


本当にお陰様よね…

…ここまで繁盛したのは他ならぬダンデくんとキバナのおかげ…もとい、2人のせいよ…

あ、怒ってないわよ?
…むしろとっても良い気分!


「俺様、初めてバイトしたー!
結構、楽しいもんだな!」


エプロン姿が楽しいのか、自撮りをしまくっている自分の兄に苦笑いを浮かべつつも似合っているので何も言えない…


「あ!キバナ!
絶対に双子だって世間に言わないでよ!?」


「へ?…なんでだよ、俺様の超美人な妹を自慢したっていいだろ?」


私の発言に不満そうに口を尖らせるキバナ…

冗談じゃないわよ?!
…そんな事が世間にバレでもしたら…!


「…毎日、この状態が続いたら…
…私、過労でぶっ倒れるわよ…いいの?」


「口が裂けても絶対に言わねぇ!」


物分かりの良い兄で助かったわ…

って言ってもどうしよう…
…しばらく忙しいのは確実だろうし…

…仕方ない…トリミングは予約制に変更して、衣類やアクセサリー類は入荷するまで待つしかないわね…
…お菓子は1日の販売数を限定して、毎日早起きして作ればいっか!


「あ!リザードン!?」


顎に手を当てて懸命に店の運営について考え込んでいると、慌てたダンデくんの声が響いた
それと同時にモンスターボールから彼のリザードンが出てきたかと思えば、私に向かって飛びついてくる!

…と言ってもかなり力を抜いてくれている…
前回、ダンデくんに怒られたのかしら…汗


「甘えん坊ねぇ…よしよし」


…トリミングとポフィンの一件以来、すっかり懐いてしまったダンデくんのリザードンはスリスリと私の顔に頬を寄せている…

営業中はお客さんも多かったし、私もダンデくんも忙しそうにしていたから出て来るのをずっと我慢していたようね…

そして店の中にグ〜…とお腹の音が響き渡った


「ははっ…すまない!俺だ!」


少し照れたような笑顔を見せるダンデくんに私もキバナも笑みが溢れた


「せっかくのOPEN記念なんだし、打ち上げでもしよーぜ!
…って言っても店じゃ落ち着かねぇだろうからダンデん家でいいか?」


「構わないぞ!
…丁度、スポンサーから頂いた珍しいワインがあるんだ!」


「じゃあ私が料理を作るわ!
2人にお礼もしたいし!」


打ち上げを提案したキバナにノリ良く返事をするダンデくんに釣られて私も声を出した

お礼のつもりで料理するって言ったけど…
…何よ、キバナのその顔は…


「え…ハナ、俺様の家では一切キッチンに立たねぇだろ…
…いつも俺様が…「ほら、早く買出しに行くわよー!!」


あり得ないと言いたそうな顔をしたキバナ…

しかも…普段、私がキバナに家事を任せっきりにしている事をダンデくんの前で言おうとするもんだから、慌ててキバナの背中を押して店の外へと追いやった

店にロックを掛けて戸締りをすれば、近くのスーパーに行って必要な食材を多めに買い込む

…スーパーを出れば、ダンデくんがリザードンの背をぽんぽんと軽く叩いて声を出した


「さぁリザードン!
俺たちの家まで案内してくれ!」


その光景に転けそうになる、私たち双子と…
…諦めたように溜息を吐いたリザードンが先頭を歩き出した…
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