ポケモン(長編)ダンデ

□6
2ページ/7ページ


とんでもない醜態を晒してしまったわ…!!

だってだって!こんな近くで雷が落ちるなんて思わなかったんだもん!!泣

本当に駄目なのよ…!
雷がフラッシュしたら音が鳴るって分かっててもビクッと体が驚いてしまう程のあの落雷音…

小さい頃から本当に無理!!
…よりによって今日は私のポケモンたちをポケモンセンターに預けて来ちゃってたから、家にひとりぼっち…

鳴り止まない雷のせいでパニック状態になった私は、キバナに助けを求めようとスマホを手にしたけど…
…震える手でろくに画面も見ないまま、操作したものだからダンデくんに電話を掛けていた…

そりゃ来てくれて助かったわよ…
安心しましたけど!!
…問題はそこじゃなーい!泣

あんな乾き切れてないボサボサの髪で、ルームウェア着てノーメイク!
オフモードだけならまだしも、私は更に大泣きして狂乱してたのよ!?

…ダンデくんにだけは見られたくなかった…泣
あぁ…私のイメージが…

落ち込む私にホットミルクを差し出してくるダンデくんの手には先程、私が引越しの挨拶用にプレゼントしたマグカップが…

気に入って貰えたみたいで何よりだけど…
…それ、ショッピングしてる時にダンデくんが好きそう…って思って気付いたら買っていた物なのよね…

…まさか本人に渡すことになるなんてちっとも思わなかったけど…汗


「…気に入って貰えて良かったわ…
えっと…そしたら私そろそろ帰…」


貰ったホットミルクを飲み干して、そろそろ帰る…と言おうとした時だった


ドッカーンッ!!


「キャァァッ!」


天気がすっかり落ち着いたと安心しきってた私

ダンデくんの部屋はカーテンが締め切られていてフラッシュの光さえも入ってこなかった為、突然鳴った落雷音に身を縮こまらせた

しかも…
部屋を照らしていた電気がパチンと消える
…悪天候からの停電だった


「ハナ!?大丈夫かっ!?」


ダンデくんのスマホロトムが灯り代わりとなって私の姿を探す…
…駆け寄ってきたダンデくんに縋るように手を伸ばせば、私は彼の厚い胸板に顔を埋めた…


「っ…お願い…今日は傍に居て…」


自分でも呆れてしまうくらい情け無い声が出た
…大の大人が雷が怖いだなんて…
幼稚にも程があるって分かっているのに…!


「…あぁ…
…君が落ち着くまで俺は傍に居るから…」


頭上から聞こえてきた穏やかなトーンの声…
…そして私を守るかのように抱き締めてくる腕は鍛え上げられた筋肉がまるで鎧のようだった

…ダンデくんは優し過ぎる…
どうしてこんなに優しいのかしら…

…雷は凄く怖い…
でも…雷のお陰でこの腕に抱き締めて貰えて…

…ダンデくんの優しさを独り占め出来るのなら少しは感謝するべきなのかもしれない…


ゴロゴロゴロッ…ピシャーンッッ!!


ひっ…!
ぜ、前言撤回…!!やっぱり無理っ!!
一生のお願いだから怒らないでちょうだい!
雷様ーっ!!泣


…結局、ダンデくんの服が私の涙で濡れるくらい、悲鳴をあげては泣き続けてしまっている…


「ほ、本当にごめんね…こんな真夜中に…
もう眠いわよね…明日も仕事あるだろうし…」


現在、私の脳内では恐怖と罪悪感が懸命にバトルを繰り広げている
…いつ鳴り止むかも分からないせいで、自分の部屋に戻ろうにも戻れなかった


「俺は徹夜に慣れているから大丈夫だ
…君こそ怖くて困っているんだろう?」


「…さっきよりは平気…
…ダンデくんが居てくれるから…安心する…」


雷に対する恐怖心のせいで私の心のチャックは緩み切っていて…
…本音がチラチラと口から溢れてしまっていた


「…それなら良かった
…ハナが安心できるなら俺も嬉しいぜ」


表情は暗くて見えないけど…
声色からダンデくんは微笑んでる気がする…
…それくらい優しさの込められた声だった…


「…ダンデくんってお人好しよね…
…疲れてた私をキルクスタウンの温泉に連れてったり、お店の宣伝や手伝いをしてくれたり…
…今もこうしてずっと抱き締めてくれるし…」


「…俺がそうしたかったんだ…キミのために」


「……え?」


ダンデくんの言葉に自分の耳を疑った
…大嫌いな雷の音を聞き過ぎて耳がおかしくなってるのかもしれない…

…それかこれは私の妄想が作り出した幻聴…?

…その言葉にどんな意味が込められているのか
気になったけど…
私は真意を聞くのが怖いと思ってしまって…
…それ以上、口が開けなくなってしまう…

それなのに私の体は、雷が鳴るたびにキュッとダンデくんにしがみついてしまって…
…そしてそんな私をダンデくんはずっと腕の中に居させてくれた…

ねぇダンデくん…
…そんなに優しくされたら私…
…あなたのことを好きになっちゃうわ…

…ううん、もうきっと…
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ