ポケモン(長編)ダンデ

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「…ボクは嬉しいけど…
…お兄さんたちは置いて来てしまって良かったのかい…?」


ダイゴの腕にくっつきながら会場へと戻れば、さっきまで喧嘩しそうな勢いだったというのにキバナとダンデくんを気にかける彼にムスッとしながら答えた


「いいの!
…私はビジネスでここに来ているのよ
引退したとはいえ、ポケモンコンテストの魅力が少しでも広まるなら尽力するわ」


「…ハナちゃんは変わらないね…
…信念も美しさも…昔のままだ」


微笑みながらそう言ったダイゴは私が敬語をやめて、素の状態で話しているせいか随分と嬉しそうに見える

…キバナとダンデくんがあんなに失礼な態度をダイゴに取ったせいよ…
…間に居る私が取り持つしかないじゃない…


「褒めても何も出ないわよ
…それより…アレは何?」


会場に戻って来てから私はどうしても気になる物があって指を指しながら尋ねた

…少し離れた位置にある大きなモニター画面にトーナメント表が映し出されていて、今夜のパーティ参加者の名前が載っている…

…ポケモントレーナーの参加者のみだけど…


「全地方からチャンピオンやジムリーダー達が集まってるからね
こんな機会は滅多にないだろうし、せっかくだからポケモンバトルを開催しようって事になってるんだ
…流石に人数が多い上に時間も限られてるから
1VS1の試合になるけど…」


「…各地方のチャンピオンやジムリーダーのみの参加よね…?
…何故かしら…私の名前があるんだけど…」


説明を聞いてポケモンバトルをする事は分かったけど、なんでチャンピオンでもジムリーダーでもない私の名前があるの?
…バトルが出来ない訳ではないけど…

私はポケモンコーディネーターだったの!
バトルは本来、専門外なんですけど!?


「ハナちゃんは特別参加だよ?
…コンテストを広めるには、キミのポケモンを魅せたほうが早いだろうからね」


「…確かにそうね…
でもプロのトレーナーの群れに放り込まなくても良かったんじゃない?
…流石に初戦敗退しそうよ…」


「負けたらボクが仇を取ってあげるから心配しないで?」


自信たっぷりにニコッと爽やかな笑みを向けるダイゴは、ホウエン地方の現役チャンピオンだけあって確かに強い

…普段は石ばっかり集めてるけど…汗


「ハナ!!
ダンデ…ダンデ来なかったか?!」


開催されるポケモンバトルにどの子と出場しようかと悩んでいると、息を切らしたキバナがこちらに走って来た


「え?来てないけど…
…まさか…迷子とか言わないわよね?
ここ広いとはいえ、室内よ…?」


「…アイツの方向音痴は筋金入りなんだよ…
ったく、急に走り出して行きやがって…!」


ええ〜…どーやったら迷うのよ…
…てゆーかキバナ、見張っときなさいよ…汗


「…ガラルの元チャンピオンは本当に迷子なのかい…?」


ほら…ダイゴも苦笑いしてるけど…
…普通に引いてるじゃない…汗


「はぁ…
ごめん、ちょっと探すの手伝ってくるわね…
悪いけど、私とキバナとダンデくんの番が来たら先延ばしにしてくれない?
…カクレオンを探すくらい大変だろうから…」


「うわ…それは大変そうだ…
分かった、順番はボクがなんとかするよ」


小さくダイゴにお礼を伝えれば、私とキバナは二手に分かれて会場内を探し回った
…が、いくらあちこちを探してもダンデくんの姿は見つからない…

もしかして…
…会場にすら戻れてないんじゃないかしら…
…自分の家にさえもリザードンが居ないと帰れないくらいだからね…全然ありえる汗

そう思って私はこっそりと会場を後にした…


「……あっ!!居た!!
もう、ダンデくん!
キバナから離れちゃダメじゃない!」


中庭にまで出ればキョロキョロしながらダンデくんを探し回る私
…流石に居ないかなって思ったけど、アーマーガア色の長い髪の毛が見えて私はホッと胸を撫で下ろした


「…!」


私の声を聞いて振り返ったダンデくんの顔は…
…明らかに不機嫌で怒っているように見えた

…そして眉間に皺を寄せたまま無言で私の前まで近寄って来る…


「…ねぇ…何をやってるのかしら…?」


…さっきから私の額にコツコツと小さくモンスターボールを当てて来るダンデくん…

…私、ポケモンじゃないんだけど…汗


「…キミを捕まえようとしてる…」


「…モンスターボールで?
…無理よ、私はポケモンじゃないもの」


ダンデくんの行動の意図が分からなくて、困惑する私はモンスターボールを持つ彼の手を掴んで静止させる


「…すまない…キミを捕まえてしまえば…
…もう他の男に触れる事はないと思ったんだ」


「…何…言ってるのよ…」


切なげに揺れるダンデくんの黄金の瞳から目が離せない
…まるで金縛りにあってるみたい…

私が他の男と触れ合ってるのが嫌って事?
…だからモンスターボールを使って私を捕獲しようとしてる?

…それって…


「…他の誰にも渡したくない
キミに触れるのも触れられるのも俺だけにして欲しいんだ…
…身勝手な願いなのは重々承知してる…!
それでも俺は…これ以上、耐えられないんだ!
…ハナの事が好きだから…!」


…彼の言動で私はようやく理解した

ダンデくんは嫉妬してくれてたんだ…
…今まで私に優しくしてくれてたのだって友人だからって理由じゃなかった…

…女性として彼は私を見てくれてたんだ…

スーッと…瞳から頬を伝って雫が落ちる
…それでも私は瞬きすら出来ずに、彼の美しい瞳に惹き込まれてしまったかのように目が離せなかった…
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