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□水没理性
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「オタクくんさぁ、いくら童貞だからってがっつき過ぎ。あんなんカノジョにやったらキレられっから。オナニーじゃねえんだからさ、もっと相手の負担考えようぜ?」
「誠に申し訳ございません…返す言葉もないです……」

セックスの後、2人してぐったりとベッドに伏して所謂ピロートーク…には程遠い、説教を僕はチャラ男から受けていた。
行為の最中のあのとろとろになった表情はどこへやら、如何にも「お前なぁ…」的な顔で正論を述べるチャラ男に僕は平伏しきりで。言ってることが一言一句その通りで、本当に返す言葉がない。相手の負担とか考えてなかった。頭が猿になってた。
童貞なのは事実だったので、ちょっと傷ついたけど黙っている。にしてもチャラ男、見た目がチャラくて舌にピアスが開いてるだけでめちゃくちゃマトモなやつだな。いや、マトモなやつは難癖つけて人をラブホに連れ込んで襲ったりしないか。前言撤回。
正直話半分なところがあった説教が続く途中、突然チャラ男が何かに気付いたような声を上げ、人差し指を立てて僕に向けた。

「オレは気持ち良かったからイイけどさぁ…あ。そういやオタクくん、名前なんつーの?オレは美崎凜っていうんだけど」
「いきなりだな!…大きい声出してごめん。僕は松谷海だけど…本当に急だね」
「いやさ、ずっとオタクくん呼びは良くないじゃん?オタクくん、ってのも見た目で言っただけだし。それにさぁ…海も、もっとオレで気持ち良くなりたいっしょ?」

いきなりにも程がある発言に面食らう。何を言い出すんだこいつという思いは間違いなく存在したし、関わりたくないという気持ちも当然あった。だけど、ついさっきまで童貞だった僕にとってこの誘いは魅力的過ぎた。
あまりにBLみたいな展開に目眩すらする。まさかこんな展開が現実に起こるとは思わなかったし、ましてや自分が当事者になるなんて有り得ないと思っていた。でも現実は小説より随分おかしかったみたいで。
目の前どころか鼻が触れそうな距離でにんまり笑うチャラ男――もとい美崎くんにキスすることで、誘いの返事とした。



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