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「おはようございます、先々代」
「ああおはよう。もういいのか?」
「ええ、すっかり良くなりました」


庭を掃いていると先々代と匡様の姿が見えたため挨拶を交わす
昨日の痺れが嘘のようにすこぶる身体が軽い
今ならこの庭全ての葉をかき集められそうだ
うん、それは嘘



「そうだ雛菊。今日も比翼院への遣いを頼めるかな」
「かしこまりました。終わり次第お部屋に伺います」



多分また比翼院へのお菓子の配達兼遊び相手のためだろう
あの子達は純粋で大人の汚い欲なんて知らないから一緒にいて楽しい
ぱぱっと掃除を終わらせ、予想通りの仕事を仰せつかった



「お、雛菊やん。比翼院行くんか?」
「前鬼様、おはようございます」
「なんや急に。硬っ苦し」
「なんたって八大様ですから」



ひょい、と荷物を奪われスタスタと比翼院へと歩いていく前鬼様
慌ててその後を追う



「ちょっと前鬼様!お返しください!お持ち頂く訳には…!」
「重いもん持つんは男の仕事やろ?気にせんでええねんて」
「……もう!」



わざと私が届かない高さに荷物を掲げ、遊んでいるようにも思える
観念して荷物を奪うことは諦めた
ええ判断や、と笑いながら前鬼様は比翼院の門をくぐった










「えーほんだら兄ちゃんもおらんようなるん?」



比翼院に着いた途端、前鬼様に群がる子供達
そりゃそうだ
つい先日すみれという子が人間と暮らすために郷を下りたばかりだから



(そんなに心から愛せる人がいるなんて、すみれさん素敵だなぁ……)



私はまだ喋れないくらい小さい子をだっこして揺れている
グズりやすいとの事だったが、今のところ静かに揺られてくれている



「おー、そいつが静かなん珍しいなぁ」
「そうなんですか?良い子ですよ。ねー?」



顔を近づけると喜んでくれた
なんとも可愛らしい笑顔にこちらまで笑顔になる



「なんか子供ができたらこんな心境なんですかね?」


















「なんか子供ができたらこんな心境なんですかね?」


俺を見てそう笑う雛菊
なんや分からんけど、その顔を見て心臓が痛くなった
なんやこの胸が締め付けられる感じは
すみれを見送った時とも違う、この感じ



「前鬼様?」
「ん、ああ。なんでもないわ」



変なの、といいながら笑っている
自分でもよう分からんまんま子供達に手を取られ雛菊とは離れてしもうた
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