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「……どうされたんですかソレ」
その日の夕方、匡様の頬には綺麗な手形がついていた
何となく察したけど聞かずにはいられなかった
「…………なんで抱かせてくれねーと思う」
「そりゃあ姫様はまだ16歳になったばかりですよ?抵抗がなかったらそれはそれで嫌でしょう?」
「そうだけどよー」
うじうじといじけている匡様のお背中が妙に小さくて笑える
笑いを堪えていると相模様がいらした
席を外そうとしたら止められたということは、私にも話があるのだろうか?
「……空いている『僧正』の枠についてでございますが」
そうか、祥様が幽閉されている今
なるべく早急にその枠を埋めなければならない
先々代からの言伝があり、候補の名前がいくつか上がった
「……江様、ですか」
その中に聞き慣れた名前があった
「雛菊は面識があるんだよな」
「ええ…私が申し上げるのもおこがましいですが、あの方がお世話係になられてからの祥様は少し落ち着かれたようにも思えます」
まぁでも、今こんな状態になってしまっているけれど
おふたりは私を見ていた
「あくまで現段階での候補とはなりますが…検討するとだけ伝えておきます」
「ああ、頼む」
一礼し、郷からの遣いに伝えに行ったようだ
その者の気配が完全に消えてから匡様は口を開いた
「俺はお前が僧正でもいいんだけどな」
「ご冗談を。匡様と八大様の信頼を損なう事はしたくありませんので」
私はあくまで使用人ですから、と言い切ると匡様はため息をついた