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(裏山って言っても、どの辺だろう)


結界の上に立ち、目を閉じる
祥様ほどの妖力の持ち主であれば、きっと「気」である程度の場所は分かるはず
おおよその場所に座標を合わせ、その場に降り立つ



「ーーーっ!?」



目の前に広がる光景に、私は自分の目を疑った
たくさんの血と力なく横たわる次郎様、三郎様
そしてその血溜まりの中に立つ祥様と持ち上げられている太郎様



「……何を、なさってるんです」



私が来たことに気づいている筈の彼は
こちらに見向くことなく太郎様に手をかざした
何よりも身体が先に動き、祥様の攻撃が私の右肩を射抜いた
とんでもない痛みが全身に走り額を汗が伝う



「…豊前様に伝えて!先々代にも!」



少し後をついてきていた使い鳥は本家に向けて飛び立った
どうか応援がくるまで、私が……!
3人の息を確認しそれぞれに結界を張る
私の「気」を注入し、せめてもの手当をしていると祥様がこちらに歩み寄った



「……これが稽古ですか?だとすればあんまりです」
「こいつらに力がないだけだ。俺は当主になる男だぞ、口を慎め雛菊」
「っ、!」



酷く冷たい目に睨まれ身動きが取れない
力を持つ妖の気に当てられ、怯えているということか



「……っは、情けない」



ぎゅ、と拳を握りしめ祥様と向き合う



「何故このような事を……臣下の心が離れることは承知でしょう!?」
「関係ないね。俺がしたいようにする」
「……っ、祥様!」



「気」を送り続けているからか目の前が霞む
そりゃ3人一気に治療しているから当たり前だ
今は立っているのがやっとの状態



「どうしたふらついて。支えてやろうか」
「さ、わらないで!」



手を振り払うが力が入らず、祥様に首を掴まれる
一本桜の湖での祥様とはまるで別人のような冷たい目



「なぜ、こんなことを……」



きりきりと締めあげる腕を必死で掴む
でも男女の差、力で勝てるわけが無い



「いいのか?気を抜くと結界が崩壊して3つ子仲良く死ぬぞ」
「っ、いわれ、なくてもっ!」



かつての温厚で優しい祥様はここにはいない
いや、これが祥様の本性だったのかもしれない
私が気付かないふりをしてきただけで



「っかは、しょぉ、さま……」
「頭がぼーっとしてきただろう。そのままお休み雛菊」



ぎり、と力が一段と強まる腕



(ダメだ、意識が……)
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