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「あれぇ、雛菊どのだ〜」



歩いていると前から駆け寄る影が3つ
その人物を見て思わず頬が緩む
もふもふのアフロに
にぱーと笑顔が似合う三郎様が抱きついてきた


「こんにちは、お出かけですか?」



3つ子は生まれつき妖力が高いため、この子達の八大天狗入りはほぼ確実なものだろう



「今から祥さまに稽古つけてもらうんです!」



太郎様の言葉に驚いた
祥様がこれまで子供と稽古だなんてことなかったものだから



(今のうちに臣下の心掴んどけー的な?)



いつの間にやら野心家になられたものだ、と思いながら太郎様の頭を撫でる



「頑張ってきてくださいませ!」
「はい!せっかくなので雛菊どのも来ませんか?」
「う…行きたいのは山々なんですけど、今から庇翼院に行く用事がありまして……」



そう言うと3人とも悲しい目をする
うう、そんなキラキラお目目で見つめないで…



「では用事が終わりましたら、向かわせていただきます。場所は裏山でしょうか?」
「わーい!じゃあぼく頑張る〜」
「ふふ、皆様お気をつけて」



立派な翼を広げ飛び立つ後ろ姿を見送り、庇翼院へと足を向けた










「あーれ、雛菊だ」
「豊前様 こんにちは」



今日はたくさんの人に会うものだ
青い目を持つ豊前様は少し眠そう



「夜更かしなさったんですか?」
「ん、まーね。どう?雛菊も俺と夜更かし」
「寝言は寝てから仰ってくださいませ」
「つれないねェ」



庇翼院に行く途中と伝えると荷物を半分持ってくれた
八大様にお手間をかけさせるなんて!と断ったが否応なくスタスタと歩いている
豊前様は先代から八大天狗としてのお務めをされている方で、先代が失踪されてからもその任を降りることはされなかった
どちらが当主様になろうと、この方は豊前様なんだろう



「ちなみに雛菊、この後は?」
「この後は祥様が太郎様達に稽古をつけてらっしゃると伺いましたので、そちらに向かおうかと」



そう言うと少し豊前様の表情が曇った



「俺の使い鳥、つけておくから何かあったら知らせて。今から俺本家に呼ばれてるし」
「? わかりました」



なにかを警戒しているような様子
その真意は分からないまま庇翼院に着いた
豊前様は笑顔で本家の方へ歩いていった
なんだろう、少しだけ胸騒ぎがする

庇翼院の住職さまに頼まれていた菓子を渡し、一緒にお茶を誘われたが断る
何故か無性に、太郎様達のことが心配になった私は
郷の人に見られないように結界を張り、その上を駆けて裏山へと急いだ
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