main

□6
1ページ/3ページ



正式に当主が匡様に決定した
それにあわせて、八大様も決定した
着実に仙果の解禁日に向けての準備が進められている



「……で、なぜ私が八大様の会合に呼ばれてるんですか」



蛇に睨まれた蛙の如く
百舌鳥の速贄の如く
私は部屋の隅で震えていた



「なんかチワワみてーだな」
「豊前様っ…そりゃびびり倒しますよこの面々は……!」



幸い見知った顔ばかりではあるものの
こうも力の強い天狗様が一堂に会されると平常心なんて保てたもんじゃない



「匡様遅いですね。もう時間は過ぎてますよ」
「あの当主ん事やから、どーせマスでもかいてんちゃう?」
「かいてねーよ馬鹿」



ガラッと豪快に襖を開け現れたのは
ご当主である匡様
その場にいる全員が頭を下げる



(八大様の会合とは言ってたけど……)



この場に僧正様の姿はない
でも正直、会わなくて済んだとほっとした
匡様は上座に座り、一呼吸置いて口を開いた



「正式にお前らを八大天狗として任命する。何があっても俺に従え。いいな」
「はっ」



ピリ、とした空気感
普段ほわほわしている三郎様も真っ直ぐ匡様を見ている
我らがご当主は、ぐるりと辺りを見回した



「雛菊、お前なんでいるんだ?」
「いや貴方がお呼びになったんでしょうが!」
「冗談冗談。じゃあ本題」



軽くあしらわれながらも話を聞く
仙果の解禁日の数日前に匡様と太郎様がお屋敷に行かれる
そして少ししてから八大様が向かわれるとの事



(いよいよ本格的に動き出す、ってことね)



仙果の姫様は一体どんな方なんだろう
匡様からお名前は伺っているけど、写真は見た事がない
幼い時の姿はそれはもう可愛かったそうだ



「で、雛菊。お前は一足先に屋敷に行って掃除しといてくれ」
「分かりました………はあ?」
「なんちゅー顔やねん」



前鬼様につっこまれるが
驚かない方がおかしいだろう



「あの…私勝手に郷から出てはいけない、んですけど」
「ん?当主命令だ。
八大とは別に女がいた方が監視も護衛もしやすいだろう。それにお前の働きは昔から知ってるし、コイツらも信頼出来るだろう」
「う……で、ですが」
「なんだお前。太郎にあの屋敷の掃除全部させる気か?」




そう言われぐうの音も出ない
お屋敷がどれほどか知らないけど、八大様が全員いらっしゃるということは
かなり広いお屋敷なんだろう
こんな可愛らしい太郎様に、そんな大変なこと任せられない!



「分かりました…承ります」
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ