main

□7
1ページ/2ページ



連日の無理が祟ったのか
昨日机でそのまま寝たのがいけなかったのか
私は風邪を引いていた
多分、風邪だと思う



「うー……うごけない」



身体が熱くてだるいし
何か痺れている感じがする
ひとつ過った考えを私は振り払う

目が覚めた時に掛けられていた羽織
それに見覚えがあった
あの一本桜の湖に行った時に、掛けてもらったものだ



(だからってまさか…そんな訳ないよね)



たしか彼は蠱術が十八番だった
小さい時にコツを教えてもらったけど全く真似出来なかったのを覚えている



「私って本当にバカだ」
「その通りですよ。全く、ちゃんと寝てください」
「ごめんなさい…」



今はお手伝いの人に看病されている
こんな事で寝込んでちゃ、いざという時戦力として役に立てない
しっかり反省をしながら寝返りをうった



「雛菊、入るぞ」
「きょ、匡様!?」



こちらをお構いなしに勢いよく襖を開けた
お手伝いさんもビックリしている
上体を起こそうとしたが、制された



「そのままでいい。悪い、2人にしてくれないか」
「か、かしこまりました!」



そして少し怖い顔でお手伝いさんを追い出した
何か問題でもあったんだろうか
人が去ったことを確認して、匡様は口を開いた



「お前、昨日の夜祥となにしてた?」
「へ?僧正様と……?」



私の記憶の限りでは彼に直接会ってない
ただ、彼の羽織が部屋にある事
そして匡様が昨夜遅く私の部屋から出る僧正様を見た事
先程までの仮説が、ぴたりと当てはまった
その事を伝えると匡様は頭を抱えた



「雛菊、本当にいいのか?」
「何がですか?」
「……祥はおそらくお前に何かしら執着している。それにお前もアイツの事……」



何を言わんとしているかは痛いほど伝わった
私は痺れる身体を起こし、匡様と目線を合わせた



「…あの時先々代の前で私が言った事に嘘はありません、確かに私は祥様との距離は近いです…でも私は自分の意思で、貴方の後ろについていく。
まだ迷っているのかもしれませんが、でもその迷いは決して匡様を裏切るかもしれないという不安ではない。それは信じてください」



あんま信用ないかもですけど、というと
匡様は安心したように笑った



「悪いな、しんどい時に。ゆっくり治せよ、これ見舞い」
「え、うわ!美味しそう!ありがとうございます」



手渡された箱には桃のゼリーが入っていた
今まで無かった食欲が、匡様のお陰で復活したかもしれない


結局一日ゆっくり寝れば、体調はすっかり良くなった
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ