My name is cassis

□結
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遠くの方で、銃声が聞こえる。
誰かが、自害した音だろうか。

路地裏で、ズサっと、力が抜けて、座る。

お腹にべっとりついた自分の血を抑え、少しだけ、止血する。
仲間の1人が打ったピストルに、当たりそうになった小さな女の子を助けた時に受けた球は、私のお腹を、内臓ごと、貫通していた。

血が出過ぎている。
ダメだこりゃ、もう、動けない。

ベルモットがシルバーブレッド、と呼んでいたあの彼。
工藤新一、という名前だったか。彼のおかげで、やっとこの苦しいしがらみから、解放される。
やっと、私は自由だ。
ゴホゴホ、と血を吐く。

たしか、近くに、シェリー、いや、志保がいるとの情報も入っていた。その目撃情報は、組織に入らないように、全て消していたけど。
生きてくれていて、良かった。
あなたのお姉ちゃんを助けられなくてごめんね。
あなたに何もしてあげられなくて、ごめんね。

親友の笑顔が思い出される。
明美、すぐに、私もそっちに行くよ。
あなたの彼氏のライ、赤井秀一のおかげで、あなたの妹も、私も、組織から解放されるよ。


ベルモットやジン、ウォッカはどうなったのだろうか。
あちら側に、警察軍の主要メンバーは向かっていたようだったから、きっとちゃんと、捕まえてくれてるわよね。
ベルモットには、もう少し、お礼言いたかったな。

組織からの総攻撃の方法は、私が公安に伝えていたものと、少し変わっていたようだった。
まぁ、予想範囲内だったけど。


力が、入らなくなってくる。
止血するためにお腹を押さえていた手が、ゆっくりと床に落ちる。

目をゆっくりと閉じる。
最期に思い浮かぶのは、バーボン、いや、降谷零の顔。

まぁ、もともと、叶うはずのない、恋だった。

感謝したいことは、山ほどある。
あなたのおかげで、人を助けるという喜びを、知ることができた。腐ったこの人生が、少しだけだけど、意味のあるものになった。あなたを思っている時だけは、幸せだった。

だから、あなたには、幸せになってもらいたい。なんて、本当、何言ってるんだろう。私なんかが願った方がよっぽど縁起が悪い。

最後の力を振り絞って、真っ青な空を見上げる。
つー、と目から流れる涙。




「さようなら、バーボン」
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