緋色のアリオーソ

□story.1 アリアという人
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ルニアスト王国の前王妃、黄金の髪に緋色の目を持つアリア・ルニアストの滅後、王国にはアリア〈緋の意思を継ぐもの〉の力を持つ者が生まれなかった。

ルニアスト王家の血筋の者は碧眼に黄金の髪というのが一般的だが、稀に緋色の目を持つ子供が生まれる。その者は一国を消し去れるほどの膨大な魔力を宿しており、その魔力を我が手中にと争いが絶えなかった。
全王妃、アリアは歴代の中でも最大級の魔力を持っていたと言われており、当時の戦争はかつてのものとは比にならないほどのものであった…



アリス「とまあ、こんな感じだったかしら」

栗色の髪の先をくるくると指に巻きながら幼い弟妹に話を聞かせていると、母親のリタが少女の頭を軽く頭を叩いた。

リタ「こら、話聞かせもろくに出来ないのかい、アリス」

アリスと呼ばれた少女は自身の頭を撫でる。


アリス「母さんいったあい…もう!分かってるって!」

戦争の後に生まれたこの少女にとって、こういった類の話は現実味がなく、聞くのも話すのも苦手だった。
それよりも外に出て動物たちと話をしたり、自然に触れていることの方が遥かに楽しいと感じていた。


ルカ「お姉ちゃま、赤い目の子はもういないの?」

フレア「おきさきさまが最後だったの?」

双子の兄、ルカと妹のフレアは大きな目をぱちくりさせてアリスを見上げた。

アリス「そうなの。お妃様には4人の子供がいたんだけど、お妃様と共にみんな戦争で死んじゃったんだって。その子たちの中に赤い目を持った子供はいなかったらしいわ」


現王であり、前王の弟であるディエゴ・ルニアストには3人の子供がいるが、いずれもアリア〈緋の意思を持つもの〉ではなかった。

緋色の眼を持つ子供が生まれると、先のアリアから緋の意思が失われ、王家の証である碧眼となり、魔力も本来の身体と見合ったものへと変化すると言われている。

アリアとは、緋の眼を持つものに継がれる名前でもあり、16年の年月を経てもなお現れることがなかったため、緋の意思は消えた、と今では誰もがそう思っていた。
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