短編*お題*誕生日*企画
□短冊にのせて
1ページ/2ページ
季節感のないこの部屋に貴女が日本の四季を連れて来てくれます。
今日もワサワサとなんだかいつもより凄い物を持ってきましたね。
――――あれは、笹ですね。
一応、私に分からないように隣の部屋に入ったつもりなんでしょうけど……バレバレですよ?
今日は7月7日、七夕ですか。
七夕飾りは画像でしか見た事がありません。それを私に見せてくれるという事ですね。
ここは黙って待ちましょう。
―――そうですね、そんな貴女の為に、今日は仕事を早めに切り上げましょうか……。
「あ、おかえり。今日は早いね」
ドアを開けると色とりどりに飾られた笹の傍に貴女がいました。
「全部1人で作ったんですか?」
折り紙で作られた飾りの一つを手に取りながら聞くと、「そうよ?」と得意げな顔をする貴女。
「Lは織姫と彦星の話、知ってる?」
「はい。働き者の2人が夫婦になったとたん全く働かなくなってしまった為、織姫の父親の天帝が2人を天の川の両岸へ引き離して、年に1度しか会えないようにしてしまったんですよね」
「そうそう。年に1度だけだよ?もしLが彦星だったらどうする?」
「私が彦星だったらどんな手を使ってでも織姫に会いに行きます」
「ふふっ。Lならやりかねないね」
私が彦星……。
それもいいかもしれませんね。
私が彦星なら――――、
織姫は、貴女。
そしたら貴女と私は、夫婦…。
『L』の名を他の者に継がせて、貴女と2人でのんびり暮らすのもいいですね。
私なら一生困らないほどの財産もありますよ?
「はい、短冊。願い事を書いて飾ると叶うんだよ」
笑顔で短冊を渡してくれる貴女。
そうですね、願い事は……
ずっと 貴女と一緒にいられますように――――
END
→あとがき