短篇
□開発部
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ある部屋の扉の前で、暗部服に身を包んだ少年が溜め息をついていた。
「何で俺が…」
面倒くさい。口には出さないまでも、呟きにこめられた感情が表れている。
その手には封書。
火影に報告書を提出し、帰ろうとしたときに半ば無理矢理押し付けられたものだった。
暗部の任務を終えたばかりで疲れているというのに、なぜ、こんな精神的に疲れる部屋に来なければいけないのか。
入りたくはないのだが、扉の前に立っていただけでこの封書が相手の元に届くわけはない。覚悟を決め、力強くノックをした。
「失礼します」
返事が返ってくることはないことを知っているので、許可を待たずにその部屋、開発部へと少年は足を踏み入れた。
書物や巻物、用途不明の機械の積みあがった壁を通りすぎ部屋の奥、その部屋の主のもとへ進む。
「あら、シカマル。どうしたの?」
「綱手様から預かり物だ。…それと朱桜、今は黒鷹だ。本名で呼ぶな。」
「平気よ、今皆いないし。だからサクラのほうで呼んでちょうだい」
暗部の少年、シカマルは、ビーカーをはじめとした実験器具の散らばる机の前で試験管を手に何やら調合していたらしいその緋色の長い髪の女性、朱桜に書類を渡した。
その女性は彼の同期、変化した春野サクラであり、彼女こそがこの開発部の長であった。
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