短篇

□残念ながらベタ惚れ
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背中をまるめ、緑茶を片手に本をじっと読むその背後から、そっと、一歩ずつ近づいていく。

そんな私の様子に気づいているだろうと、わかっていながらも、気配を消してそっと近づく。


「シーカーマール!」

背中に思いっきり抱きついた。首にそっと手をまわして、体をくっつけて。
でも彼はただ、手に持っていた湯飲みを両手で静かに支えて溢れるのを防ぐ。ただ、それだけ。
振り返るとか、声をかけるとか、何にもない。

「シカマルっ!」


もう一度名前を呼ぶ。
あーと曖昧な声をかえしたものの、将棋の本に視線を固定したまま静かに緑茶をすする。


「詰め将棋…これまたジジくさいものを……」

「………いいだろ、別に」

漸く答えてくれた言葉がそれなんて。
ちょっとむくれて見せると、気づいた彼は、こちらに顔を向けてくれた。


「どーしたよ」

その一言だけ、だったけど、嬉しくなって思わず笑顔になった。

「かまって」

ぴたっと止まった動き。
表情に変化はなくて、少し考えたようすで、そっと緑茶を置いた。


「かまえ、っつわれてもな…」

頭をかいて、少し眉をよせながら困った表情をしているから、シカマルの肩越しに身をのりだしてそっと口づけた。


「シカマル」

甘くなってしまった声。
名前を呼んだら、そっと笑ってくれた。


「サクラ……」

仕方ないな、という風に息をはいて口付けてくれた彼に、しがみつくと腕をはがされ、シカマルがこちらに向き直った。
でも、唇ははなしてくれない。

どんどん深くなっていくそれと同時に、抱きしめられる体。
されるがままにしていたら、服の中に入りこんできた手。


「んっ……ちょっと、」

「んだよ」


シカマルの腕をはがしたら少し不機嫌そうな顔。


「こんなとこでやめなさいよ」

「お前が言ってきたんだろ?」


意地悪な言葉。でもつい顔を赤くしてしまって、調子づいて更に服に手をかけようとするのを止める。

「ちょっと!」

「奥行くか?」

その視線に、動きを縛られた。


「バカ………」

「…そんな顔で、言われてもな」


意地悪く笑うシカマルを、私は見上げることしかできなかった。





(090811)


どうだろう、こんなバカップル

( 確かに恋だった 様より題拝借)


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