自分の父親は毎週木曜か金曜、またはそのどちらも県南の方へ仕事に出かけていました。
自分の家は県北、県の一番上の市に住んでいます。
父親は毎週片道100km以上の距離を仕事に出かけていました。
だから帰ってくる時間も必然的に遅くなります。
帰ってきた父親の為に家の鍵を開け、荷物を持つのが自分の仕事でした。
父親はいつも車で仕事に行きます。
家にある車は2台、トヨタのウィッシュと軽バンです。
軽バンは3台目で結構長く軽バンに乗っています。
父親は近場に仕事に行く時は軽、遠くに行く時はウィッシュと使い分けていました。
ウィッシュは初期型のやつなんですが、以外にエンジン音がうるさいです。
だから帰ってくるとすぐにわかります。
そのエンジン音が聞こえたら父親が鍵を開ける前に自分が鍵を開けるんです。
そして荷物を持って一番に「お帰り」と声をかけていました。
すると父親は「ありがとう、ただいま」といいます。
それが自分の密やかな楽しみでした。

ここまで書いておいてなんですが、今回自分が言いたいのはこれじゃないんです。

軽バンは3台乗り継いでいると言いましたが、その内2台目はMTでした。
だから帰ってきた時はもっと解りやすいんですよね。
MTだとバックギアに入れたときにギアの擦れる音がします。
その音がしたら父親が帰ってきた合図だったんです。
ウィッシュも解りやすいのですが、家の前の道路はそれなりに車が通るので、父親の車が家に入ってこないと解りません。
でも軽の方なら家に入ってくる前に帰ってきた事に気づけるのです。
でもその車はまだ父親が生きている間に壊れて買い替えてATになってしまいました。
だから例え父親が帰ってきてももうその音を聞く事はありませんでした。
そして父親が亡くなった今、さらに一年も経った今更ながら。

そのバックギアに入れる音が聞きたくなるのは、何故なのでしょうか?

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