□欲しいもの
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「おや…随分と静かになりましたね…安心してください、殺したりはしませんから」

「…別に…お前に構ってくれなんて頼んでねぇよ」

政宗は尚も強がって見せた。

「それはそれは…でしたら私は余計なことをしましたね………独眼竜、」

そこまで言うと光秀は政宗に顔を近付けて言った。


「嘘はいけませんよ」



「…あなたの気持ちは手に取るように分かりますよ…あなたのそれは幼子のようだ。構って欲しいからわざと気を引くようなことばかりする」

「なん…だと…」

政宗の殺気を帯びた隻眼に光秀は気付いた。

「怒ってしまいましたか?…からかいすぎてしまいましたね」


そう言うと光秀は持っていた刀を畳に強く刺した。


「私はあなたを怒らせてばかりですね…申し訳ありません独眼竜…私もただあなたと親しくなりたいと…そう思っただけなのですよ…」

しかしその言葉を政宗は鼻で笑っただけだった。

「建前はどうでもいい。本当は何が目的なんだよ…お前こそ嘘吐くんじゃねぇよ」


「…おやおや…これは手厳しいですね……ですが良いのですよ…私の目的のものは願っても手に入るものではありませんから…」

「言ってみろよ」



すると光秀は政宗の傷付いた足を取った。

「!!痛ぇな!!何しやが…」

痛がる政宗に構わず光秀はその足に口を近付け傷口に舌を這わせ流れ出る血を啜った。


「私が欲しいものは…あなたの心と身体。両方でなければならない…片方でも欠けていたらあなたを本当に手に入れたことにはなりませんからね」

「…だったら一生手に入らねぇな」

「そうでしょうね。ですから言うのを躊躇ったんです。あなたの心は既に……」

そこまで言い掛けて光秀は言うのをやめた。
自虐的だな、と心のどこかで自嘲しながら。



「…今日はもうおいとまさせていただきます…次はあなたから私を訪ねてきてくださるでしょうから」

「は?誰が会いに行くかよ」

「あなたは、必ず、私に会いに来なければ、ならない…その理由がすぐに分かるはずですよ…それでは」

それだけ言い残し光秀は夜の闇へ消えていった。



呆然と光秀が去って行った方を見ていた政宗だったがあることに気付いた。



「小十郎…?!」


慌てて小十郎の自室に駆け込む政宗だったがすでに遅かった。



「…あの野郎…ッ!!例えあいつの思う壺だろうが何だろうが会いに行ってやる…!会いに行って……」







さて…独眼竜は変わり果てた最愛のものと再会したようですし私は自分の城へ帰るとしましょうか。

帰ってあなたを待ちますよ…。

壊して繋げられる関係だなんて毛頭思ってはいませんよ。

手に入らないのなら奪うまで。私はそんなに優しい人間ではないのですよ?


さあ早く、私に会いに…私を殺しにいらしてください独眼竜…。




END


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