□赤
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その人の秘密の場所へゆっくりと侵入してゆく…。

少しだけきついがそんなことは少しも気にならなかった。
今はただただ深く、奥へ…そんなことしか考えられずに腰を押し進めた。

奥へ達したらまた入り口まで引き抜きまた奥へ…。

繰り返し繰り返し繰り返し…。


「そういえば…」

その人の上で動きながら思い出したことがある。

「…『好き』だなんて言葉、私には似合いませんね…」

似合わない…だったらこの思いは何だ?


好きだとか愛しているだとか考えたこともない。

愛したとしても…結果がこれだ。
ずっと一緒には居られない。


使い捨てだ。
所詮…

「あなたのことなど愛していない…っ…愛してなど…」

その人の一番奥で自分の醜く隠してしまいたいような欲を吐く。

それでも何かが足りなくて、広げた鮮やかな赤に今度は直接顔を埋め頬擦りをする。
愛しい赤。手放したくなどない赤。

その人と繋がったまま私はただずっとその赤に酔い痴れていた。

赤を掻き回す感覚が、感触が私を堪らない気持ちにさせる。

手に取り顔や体中に擦り付けた。



しかし頬を伝うのはまた別の雫。

どうしてこんなにも寂しい気持ちになるのだろう。
ひとりきりだ。誰も居ない。
どうして誰も居ないのだろう。


その人の赤を触れて、見て、ふと…私もその人と同じように赤を纏いたいと思った。


「あなたの赤だけでは足りないのです」

その人の腹を裂いた刀を今度は自分の腹に押し当てる。
それを何度も何度も繰り返す。

「…こ……れで…あなたと同じになりまし…た…」

そのままその人の腹の上に倒れ込み、その赤同士を擦り合わせた。
その瞬間言い知れぬ快楽が体を駆け抜けた。

「やっと…あなたとひとつに…」

なれた。


「あっ…あは…っ…あははははは!!!!」

嬉しい嬉しい嬉しい…


この世にはあなたと私のふたりきり。


幸せだ。



END


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