リクエスト

□繋いだ手
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どうか今だけでも


このぬくもりと


共に在りたい



―繋いだ手―



「宿の近くまで送る」

用件自体は俺から言い出したものだったとは言え、わざわざついてきたのはエミルの方だ。
それなのに俺は、気が付けばそんなことを口走っていた。

「ありがとう、ございます」

ふわりと微笑むエミルに目を奪われそうになる。
動きが止まりそうになったのに気づき、慌てて目をそらした。

「…行くぞ」
「はいっ!」

そんな俺の胸の内を知るよしもないエミルは笑顔で頷き、後をついてくる。

こうしてエミルと行動を共にすることは、頻繁ではないものの、稀有なことでもない。
敵だなんだと言いながら、何かある度にエミルの協力を得てしまっている。
どんな風に言い訳をしてみても、結局のところ俺はエミルと共に在る時間を持ちたかったのだろう。

そして、エミルには笑顔でいて欲しい。
その笑顔を横で見ていたいと思ってしまう自分がいる。
信じがたいことだが、それを否定できるだけの要素は、もう自分の中に見出だすことができなかった。

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