リクエスト
□君と生きる
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死ぬことは怖くない
だけど
君との別れは怖いんだ
―君と生きる―
目の前の魔物を倒し、一瞬気が抜けたのだろうか。
背後に迫る気配への反応が遅れた。
「くっ……!」
なんとか体をひねり、矢を撃ち出そうとしたものの、体の反応速度が追いつかない。
殺られる、そう思った刹那。
「レイヴン…ッ!」
悲痛な音色で呼ばれる名前。
自分と魔物の間に射す影。
ザシュッという斬撃の音。
飛び散る血しぶき。
目の前で倒れていく長い黒髪。
その全てが、スローモーションで、幻みたいに見えて。
「ユー…リ?」
反射的に構えていた矢を放ち、脅威の元を討ち倒しはしたものの。
そのあとは、足が地面に縫い止められたように動かない。
指先から、体内全ての血液が凍りついていくようだった。
「「ユーリッ!」」
仲間たちが倒れたユーリに駆け寄っていくのが見える。
だけど、まるで他人事、別の場所で起こっている何かの映像のように実感が湧かない。
ここまで動揺している自分自身への驚きもあった。
なんていうのは建前か。
俺は、ユーリが自分の身代わりになったという事実が…ただショックだったのだ。
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