リクエスト

□ひだまりの中で
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あたたかすぎる


貴方の愛で


とけてしまいそう



―ひだまりの中で―



ぽかぽかとあたたかな日射しに包まれた小さな丘の上。
大きな木の根元に座って。

「リヒターさん?」

僕は…リヒターさんに後ろから抱きしめられています。
腰にしっかりと両手が回されていて、動くにも動けない。
あ、こうしてるのがいやなわけじゃないよ、もちろん。
む、むしろ嬉しい…かな。

ただまぁ、なんでこうなったのかはちょっとよくわからなかった。
だけど、

「どうした?」

優しい声が耳をくすぐって。
すっと優しげに細められた目に見つめられると、細かいことはどうでもよくなった。
こうしていられるのは嬉しいことだもの。

何より僕は、リヒターさんが、こんなにも心穏やかそうにいられることが、嬉しい。
僕の知る限り、リヒターさんは険しい表情をしてることが多いから。
僕が思っているよりずっと大変なことをリヒターさんは抱えてるんだと思う。
そのリヒターさんの負担の全てを僕が取り除けるわけじゃないことはわかってるけど。
こうやって一緒にいることで、少しでもリヒターさんの心を軽くしてあげられたなら。
少しでもリヒターさんの力になれたなら。
僕は幸せなんだと思う。

「呼んでみただけ、です」
「ふっ……そうか」

ちょっといたずらっぽく言ってみると、リヒターさんは小さく笑ってくれた。
そして、ぽん、と頭に手を乗せて軽く撫でてくれる。
それだけで、どうしようもないくらい胸の奥があったかくなった。

何を話すわけじゃない。
何をするわけでもない。
ただ、同じ空間にいて、同じ時間を共有する。
それだけのことが、すごく幸せに思えた。

ゆっくりゆっくり過ぎていく時間。
あたたかくて優しい空気。
ずっとこのまま、二人っきりでいられたらいいのにな。
あんまり幸せすぎて、夢なんじゃないかと思うくらい。
ホントに夢だったりしたら、困るんだけど。
そんなことを思いながら、僕はそっとリヒターさんの胸に顔を寄せた。

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