幸せの軌跡

□第10話 謎の視線
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背後に迫る


謎の気配に


ご用心?



幸せの軌跡
  第10話
―謎の視線―



実は、最近外を歩いていると、妙な気配を感じるときがある。
振り返っても、特に何かの姿が見えるわけじゃない。
最初は気のせいかと思った。
だけど、日に日にその気配、視線が強く感じられるようになってきて。

特に今日はひどい。
突き刺すような視線についに耐えきれなくなって、

「誰だ!出てこい!」

振り返り声を上げてちまった。
すると、待ってましたとばかりに飛び出してきたのは、やたら派手な頭に派手な格好の男だった。

「ユーリ・ローウェル!」

そして、ビッとこっちを指差して声高にオレの名前を叫ぶ。
って、コイツ、なんでオレの名前知ってるんだ?
オレにはこんな明らかにおかしい知り合いはいない。

「今こそ俺とお前の決着をつける時だ!」

そんなオレの困惑は全スルーで高らかに宣言する謎の男。
決着?オレ何かしたのか?
酔っ払って喧嘩吹っ掛けたとか、そういうのか?
記憶を辿ってみたが、特に思い当たる節はない。
できるだけ関わりたくはないが、訳のわからないまま因縁をつけられるのも困る。
仕方なく、少し控えめに聞いてみることにした。

「アンタ…誰だ?」
「お前の宿命のライバルだ!」
「は?」

いや、オレはそんなことが聞きたかったわけじゃなく、だな。
どういう言い方をしたら理解してもらえるのかと頭を悩ませるオレのことは気にした様子もなく、ソイツは何かを言い続けているようだったが、それは全て右から左に流れていく。
そして、一人盛り上がる謎の男にそろそろ恐怖を覚えてきた。
逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

「運命だと思うだろォ!?」
「思わねぇよ!」

が、あまりに突飛な発言の連続に、つい反射的に返事をしてしまい、しまったと口を押さえたときにはもう遅い。
ソイツは、それなら強行手段に出るしかないと言わんばかりにニヤリと笑った。
背筋を嫌な汗が伝う。
そして、オレはソイツに背を向け、全速力で走り出した。

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