幸せの軌跡

□第14話 迷走シンドローム
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わからないんだ


このモヤモヤと


イライラの正体が



   幸せの軌跡
    第14話
―迷走シンドローム―



「ん……ふわぁぁぁ」

カーテンの隙間から射し込む光で目が覚める。
目をこすりながら体を起こすと、

「っ……」

頭がずきりと痛んだ。

その痛みで昨夜のことを思い出す。
とは言っても、記憶があるのは途中まで。
自分でベッドに潜り込んだ覚えはないから、おっさんがやってくれたのかもしれない。

「ん〜」

伸びをして辺りを見回すと、昨日のことが嘘のように綺麗なままで。
ふと、綺麗に片付けられたテーブルの上に紙が一枚乗っているのが目についた。
それを手に取ってみると。

『ちゃんとベッドで寝ないと風邪引くわよ!
これからは気を付けること!
あと、無理して飲まなくていいんだからね。
寝顔は可愛かったけど!

          おっさんよりv』

最後ハートマークっておっさん…。
らしいと言えばらしいけど。
つか、メールでもよかっただろうにわざわざ紙って…。
あと、最後の一文は余計だ。
けど、これをおっさんが書く様子を思い浮かべるとなんだかおかしくて、こういうのも悪くない気がした。

とりあえず、顔を洗って、頭すっきりさせたら、おっさんに一言言いにいこう。
片付けてもらった礼と、勝手に寝ちまった詫びと、な。
そう思って、適当に着替えて部屋を出る。
こういうとき隣って便利だ。

チャイムを鳴らそうと手を伸ばすと同時に、

「っと」

ちょうど外に出るところだったのか、ドアが開いた。

「あ、おはよう」
「お、おはよ」

オレに気がついたおっさんは、少し目を見開いて驚いた顔をした。

「あのさ…」
「あ、ごめん、おっさんちょっと仕事あるから」
「え、あ、あぁ…いってらっしゃい」

その表情にちょっと違和感を感じつつも、話を切り出そうとすると、おっさんに遮られて。
ほとんど一言挨拶しただけで、おっさんはそのままオレの横をすり抜け、ひらっと軽く手を振ったあと、すぐに見えなくなった。

一瞬の出来事で何も言えず、仕方なく部屋に戻る。
まぁ、礼くらい帰ってきてからでもいつでも言えるしな。
と、思ったと同時に、妙な感覚に襲われた。

って、仕事?
昨日「明日はお休みだ〜」って喜んでたような気がするんだけど。
記憶が曖昧でイマイチ自信が持てない。
急に仕事が入ることも、まぁあるだろう。

だけど、なんかおかしくないか?
何とははっきり言えないが、違和感がある。
おっさんが、いつもと違った気がする。
なんていうか、少しだけ、よそよそしいような。

も、もしかしてオレ昨日なんかしたのか?
メールで聞こうかと思ったが、どう言えばいいのかわからない。
それに、もし万が一どうしようもない失態をおかしてた場合を考えると、聞きづらくて。
モヤモヤを抱えたまま1日を過ごした。
夜に一度顔を合わせたけれど、そのときも何か用事があるとかでさらりとかわされて。
結局、その日おっさんとまともに話すことはできなかった。

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