幸せの軌跡

□第16話 変わる景色
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何かが少しずつ


変わっていく


そう、自分自身も



 幸せの軌跡
  第16話
―変わる景色―



おっさんが、オレを好き?

おっさんの部屋を飛び出したオレは、そのまま自分の部屋に駆け込んだ。
近所迷惑とかそんなの考える余裕もなくて、バタンと音を立ててドアを閉じる。

「な、なんなんだよ…」

閉じたドアに背をつけて、深呼吸を繰り返す。
だけど、動悸が収まらない。
心臓がばくばくと跳ね続けていた。

わけがわからなくて、頭ん中がぐちゃぐちゃだ。
何より、自分がわからなかった。
好きだって言われたからって、キスされてもいいことにはならない。
なのに、オレは…。

きっと、おっさんのことは自分で思ってた以上に身近な存在になってたんだと思う。
だから、隠し事されるのが気に食わなかった。
そう考えたら今までのイライラも説明がつく。
きっと、オレにとっていつの間にか、おっさんがそこにいることが当たり前になってたんだ。
おっさんと他愛もない話をするのが、オレの日常だった。
そんな風に考えたら、なぜだか急に、胸のつかえが取れた気がした。

って、ん…??
それはつまり、オレも…おっさんが好き、なんだろうか。
おっさんが言うように、友達として、じゃなく。
いやいや、それはないだろ。
あるわけない、あってたまるか。

だけど、あのとき…嫌、だとは思わなかった。
男同士なのに、おかしいよな。
おかしいってわかってるのに、嫌じゃなかったんだ…。
拒絶、できなかった。

どうしてあんなこと言っちまったのか、全然わからない。
あれじゃ、オレも好きだって言ってるようなもんだ。
おかしい、おかしいのに…なんで。

考えれば考えるほど、わからなくなって。
ろくに眠れないまま、気がつくと朝だった。

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