幸せの軌跡

□第18話 アイアイ傘
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やまない雨と


二人の距離と


一本の傘



 幸せの軌跡
  第18話
―アイアイ傘―



季節は梅雨。
夏が目前だというのに、天気は毎日がたがた。
ひたすらに続く雨に、だんだんと憂鬱な気分になってくる。
早く梅雨が明けないかと考える毎日だ。

まぁ、日々ストレスが溜まることばかり、ってわけでもないんだけどな。
最近は成り行き上おっさんといることが多くなった。
セクハラまがいな発言行動もないとは言えないが、許せないほどのもんじゃない。
むしろ、おっさんといることで、前よりも笑うことが増えたような気がしないで
もない。
それはおっさんの性格というか人柄というかの面白さのなせる業かもしれないな。

ぼんやりと考え事をしながら駅から出ると。

「げ…」

今日は昼間は雲はあるものの一応晴れていたから、帰るまでは大丈夫かと思っていた。
という油断を嘲笑うかのように、ぽつりぽつりと降りだした雨を恨めしく思いながら、空を見上げる。
ついさっきまでは大丈夫だったってのに…。

ため息をつきながら鞄を漁り、折り畳み傘を取り出す。
折り畳みじゃ小さいけれど、ないよりはマシ。
毎日デカイ傘を持ち歩くのもいやだった。
そんなことを思う間に、だんだんと強くなってくる雨脚に憂鬱な気分になってきた。

とにかく、これ以上雨が強くなる前に早く帰ろう。

そう考え、傘を開き駆け出した直後。

「ユーリ!!」

名前を呼ばれて振り返ると、へらへらとした笑顔で手を振るレイヴンの姿。
イヤな予感しかしない。

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