幸せの軌跡

□第19話 君のためにできること
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1人で抱えないで


君のためなら


なんでもできるから



    幸せの軌跡
     第19話
―君のためにできること―



最近、ユーリがどことなく上の空な気がする。
気になって本人に聞くと「なんでもない」って一蹴されちゃうんだけど。
もちろん、それで「はい、そうですか」にはならない。
そんな簡単なものじゃない。

一応、何を気にしてるのか、なんとなくわかるような気はする。
っていうか、原因俺…よね、きっと。
振り回しちゃってるんだろうなぁ。
わかっちゃいるけど、だからって諦めるなんてできないし。
だからせめて、悩みとか言いたいこととかがあるんなら、溜め込まずに言って欲しいと思う。
それがお互いをより理解することにもなるだろうしね。

走り出した想いは簡単には止められない。
けど、だからこそ相手を大切にしたいって気持ちも大きい。
どうしたらそれが伝わるのかな。

なんて、学校を出てからずっと同じことばっかり考えてたら、結局気がついたときにはもう家の前だった。

「ただいま〜」

誰も返事なんかしてくれやしないけど、習慣的に呟いて中に入る。
それにしても、今日は遅くなっちゃったなぁ。
ユーリもきっともうご飯食べちゃっただろうし、今日は一人寂しい夕は…ってあれ?

ふと、違和感に気づき、携帯を取り出す。

約束してるわけじゃないけど、一応家に帰ったらお互いメールを入れるのが習慣になっていて。
もし時間が合えばご飯を一緒に食べたりしていた。
こんな時間までなんの連絡もないなんてことなかったのに。

青春を謳歌してる大学生だもの。
たまにはそういうことがあったっておかしくはない。
でも、なぜだか胸騒ぎがして、そのままにはできなかった。
荷物だけ置いて着替えは後回し、そのまま部屋を出てユーリの部屋のチャイムを鳴らす。


――ピーンポーン


「ユーリく〜ん?」

呼びかけながら、何回かチャイムを鳴らしてみても全く反応がない。
いないのかな、とも思うけど、どうしても落ち着かなくて。

不審に思いながら、ダメ元でドアに手を伸ばすと…

ガチャ

「開いてる…」

小さな音を立てて、ドアは開いてしまった。

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