リクエスト

□いろどり
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色付き


波立つ


心模様



―いろどり―



待ち合わせ場所は赤い鳥居の前。
赤々と輝く夕陽が濃紺の地平線に沈み溶け合う頃。
俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「リヒターさん!」

エミルはパタパタと、下駄を鳴らしながら走ってくる。
応えるように軽く手をあげると嬉しそうにはにかんだ。

「お待たせしましたっ」

走ってきたせいだろう、軽く息を弾ませながらぺこりと頭を下げた。

「そんなに走らなくても俺は逃げないぞ」

からかうように笑いながらその頭を軽く撫でてやると、エミルもくすりと笑う。
まぁ、走らなくてもいい、とは言ったものの自分の元へと急いでくれたことは嬉しかったわけだが。

「この格好…ちょっと慣れなくて、色々時間かかっちゃって」

少し照れたようなエミルのその言葉に、改めて服装に目を向ける。
少年らしい、白と青の爽やかなデザインの浴衣。
提灯の明かりを受けてキラキラと光る金髪ともよくマッチしていた。

「………」

うまくできなかったのか、それとも走って緩んだのか。
僅かに覗く胸元の肌の色が目に眩しい。
健康的な褐色の肌は、つい手を伸ばしたくなるほど綺麗だった。

そんなことを考えていたせいで、自然と眉間に皺(本音を隠すための癖だと最近気づいた)が寄っていたらしく。

「えと…やっぱりへん…ですか?」

エミルは不安げに俺を見上げていた。
しまった、と思い気を取り直してエミルに目を向け、感じたままに言葉を紡ぐ。

「いや、そんなことはない。とてもよく…似合っている」

それは、自分でも驚くほどにすんなりと音になった。
へへっ、とくすぐったそうに笑うエミルにつられるように、自然と笑みがこぼれる。
これだけでも、わざわざ浴衣を用意して出向いてきた甲斐があるというものだ。

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