ユーリ受

□明星
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「デューク?」

名を呼ばれ、意識を戻す。
心配そうに私を見つめる、ダークグレーの瞳。
その瞳に囚われそうになるのをなんとか繋ぎ止め、体を彼に向けた。

「なんでもない」
「そうかぁ?なんか随分長い間ボーッとしてたみたいだったけど」

どのくらい思考の世界にとんでいたのだろうか。
彼を心配させてしまったことに少々の後悔の念を抱いた。
傍らにありながら余計な気を回させることは私の矜持が許さない。

そう、星喰みの脅威から救われ、新たな道を歩み出したこの世界で。
私は彼の隣にいた。
私の隣には、彼がいた。

「まぁ、大丈夫ならいいんだけどな」

そっと目を細め、優しげに微笑む。
その全てを包み許すような、慈愛に満ちた笑みは私には眩しすぎるくらいで。

「すまなかった」
「んぁ?何謝ってんだよ」

その謝罪には、今しがただけのことではなく、これまでのこと全てを含めたつもりだったのだが。
よくわからない、そんな表情で彼は首を傾げた。

艶やかな彼の漆黒の髪を手で梳くと、指の間をさらりと流れて。
心地よい感触に目を細める。

「ユーリ」

小さくその名を口にすると、それだけで満たされるような不思議な感覚が私を包む。
胸に広がるこのあたたかさを、なんと呼べばよいのか…。
今までの孤独や苦悩を全て包みこみ、打ち消してしまうような、そんなあたたかさ。

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