リクエスト

□君と生きる
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「ごめん…」

何も難しいことなんかじゃない。
大切な人を守りたい。
大切な人を死なせたくない。
ただ、それだけ。
大切な人を失うのが怖かった。
自分が消えることよりも怖かった。
ただ、それだけ。
俺も、ユーリも。

「でもね、おっさんだって…ユーリがいなくなるのはいやだから」
「ん…」
「無理だけは、しないでよ…」

ぽんぽんと頭を撫でてやれば、小さく何度か頷いて。
その仕草が、ちょっと可愛らしかった。
なんて口に出したら怒られるんだろうけどね。

そんなユーリを前にして。

死にたくない、と思った。
自分のためより、ユーリのため。
ユーリと同じ時間、同じ道を歩むため。
生きていたい、と。
ユーリと共に生きたい、と。

まさか自分が、そんな願いを抱くようになるなんて。
10年前のあのときから、夢も希望も失ったはずだったのに。
だが、不思議と満たされたような感覚があって。
これでいいのだと、そう思えた。

「ユーリ」
「…なんだよ」

だから、今伝えたい言葉はただひとつ。

「ありがとう」

その言葉を聞き、面食らったように、大きく目を見開いて固まるユーリ。
その可愛らしい反応に漏れそうになる笑いをなんとか抑え込んで、そっと手を握る。

「これからも、よろしくね?」
「……気が向いたら、な」

全く、素直じゃないんだから。
さっきまでの姿が嘘みたいにいつも通りになったユーリは、つんとそっぽを向く。
だけど、頬と耳の赤みが隠せていない。
どうしようもなく幸せな気分になって、もう一度ユーリの頭を撫でた。



きっと君となら


幸せな未来が


待っているから



END



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