リクエスト
□毎日がデート
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「なぁ、これってどこに……って、おっさん?」
いねぇし…。
いつの間にはぐれたんだ。
まぁ、はぐれたからと言ってそんなに大騒ぎするような年じゃないからもういいか。
おっさんがふらふらしてるのはいつものことだしな。
ってことで、もう気にするのはやめて買い物を続けようとすると、
「ユ〜リく〜んっ」
「っ、おっさん、あんたどこ行って…!」
いきなり後ろから背中を叩かれた。
相手が誰かなんて考えなくてもわかる。
無視するのもあれだと思って振り向くと、
「はい、これ。こーゆーの好きっしょ?」
オレの質問をさらりと無視してウインクと共に渡されたのは、さっき露店で売られていた焼き菓子で。
オレが見てたの、気づいてた…のか?
それでわざわざ買いに…?
「あり、がとう…」
ふざけてるのかと思えば、こういうのがあるから…困る。
いや、迷子になられるのももちろん困るんだけどな。
「じゃ、荷物貸して。それ食べるのに邪魔でしょ」
「あ、ああ…」
いきなりのことに困惑が抜けなくて、差し出された手に持っていた荷物を素直に乗せてしまった。
まぁ、せっかく買ってきてくれたんだし、手まであけてくれたんだからここは甘えておくべきなんだろう。
「あ、うまい…」
「そう?そりゃあよかった」
ニカッと笑うレイヴンの姿に、一瞬ドキッとしてこそばゆい気持ちが沸き上がってきた。
いや、それはない。
口の中に広がる甘さのせいだと思うことにしよう、そうしよう。
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