幸せの軌跡

□第1話 俺たちの序曲
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今思えば


俺たちの出逢いは


運命だったのだろう



 幸せの軌跡
  第1話
―俺たちの序曲―



3月。
もうすぐ新学期。
世間の学生諸君にとって今は楽しい春休みだけども。
残念ながら、ゆっくり休む暇なんてもんは、俺たち教師にはない。
今日も色々としなきゃいけないことがあって学校に行ってたわけだが。
まぁ、まだ明るい時間に戻ってこれただけマシな方。
軽〜く晩飯のお買い物をしてきたから、あとはうちでのんびりすればいいわな。
なんて、考えながらアパートの階段を上がりきったところで。

「な、なんっじゃこりゃ…」

大量の段ボールさんたちとこんにちは!した。
通路を埋め尽くす段ボールの山。
その中にゆらりと動く影がひとつ。

「あ……」

流れるような、艶やかな黒髪。
すっと通った鼻筋。
澄んだ色をした瞳。
そこいらの女の子じゃ敵わないくらいの美人が、そこにいた。

少し考えれば、タッパと骨格で男だってわかるけども。
それでも目を奪われたのは確かだった。
そのまま数秒、呆然として立ち尽くす。

「あ…どうも」
「ども〜」

そんな俺の姿を見止めたらしい青年は、軽く会釈をした。
こちらからも挨拶を返すと、また軽く頷いて、箱を一つ抱えて開け放たれたままだったドアの奥へと入っていく。

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