幸せの軌跡

□第2話 陽光を浴びて
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「だから、あれは誤解なんだってば〜」
「嘘つけ、ちょっとかすっただけならまだしも絶対撫でただろ」
「いや、まぁ、いい触り心地だったけ…ぐはっ!」

身振り手振りで必死に弁解…きっちり弁解してくれればまだ許す気にもなるのにこれだから手に負えない。
本当に謝る気はないのか、コイツには。
聞きたくもない言葉を遮るように、とりあえず右ストレートを叩き込む。

「〜〜いっったいよ!マジ痛いから!」
「オレはおっさんのせいで心に傷を負ったんだよ」

殴られた頬を擦りながら、涙目で訴えるおっさんに反省の色は見られない。
本気でボコボコにしてやりたくなったが、もうそれすらも面倒な気がして、仕方ないから話題を変えて早く会話を終わりにしよう。

「大体、どこ行くんだよこんな時間に」
「ん?あー、がっこ」

…がっ、こう??
"がっこう"って、"学校"か?

「なんで」
「なんでって俺、教師だし」
「あー、教師……ハァ!?」

今、ものすごくあり得ない単語が聞こえてきたのは気のせいか?
むしろ誰か気のせいだって言ってくれ。

「何驚いてんの?ほら、あそこの山の上の学校、知ってるっしょ?」

オレの動揺をよそに、おっさんはあっけらかんと答え、遠くの方を指さした。
その指の示す方にある学校くらい、もちろん知ってる。
このへんじゃ指折りの進学校だからな。
って、こんな胡散臭くて適当そうなヤツが……いや、嘘だろ?
目眩がしそうだった。
こんなんが教師になれるなんて世も末だ。
大丈夫なのか、この国。

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