幸せの軌跡

□第6話 ありがとうのきもち
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ささやかだけど


お礼の気持ちを


そっと込めて



   幸せの軌跡
    第6話
―ありがとうのきもち―



大学から帰り、ベッドに寝転がって雑誌を読んでいると、日曜日のことをふっと思い出した。
おっさんのおかげで――まぁ、勝手なおせっかいではあったけど――気になっていたケーキバイキングに行くことができて。
しかも、そんなに高額じゃあないとはいえ奢ってまでもらっちまった。
なら、何か礼をすべきなんじゃないか、って唐突に思って。
というか、借りを作ったまま、ってのも居心地が悪い。

かといって、オレにできることなんて限られてる。
というより、おっさんのためだけに何かを買うとかするとかっていうのはなんていうか…だった。
それなら……そう、自分の飯のおかずなりを多めに作って持っていけばいいんじゃないか?
料理をするのは嫌いじゃないしな。

「よっし」

そうと決まれば早速行動開始だ。
弾みをつけてベッドから身を起こし、キッチンへ向かう。

「なんかあったっけか…」

いざ冷蔵庫を開いて、中身を確認。
メニューを考え始めたはいいが…おっさんの好みがわからないことに気がついた。
おっさん、結構酒飲むよな、たしか。
そうするとつまみになるようなもんがいい、かな。

がさごそと冷蔵庫を漁ると。
前に冷凍したイカを発見。
まだ食えるだろ、たぶん。
あとは大根とかあるから一緒に煮ればいいんじゃないか?
ちょっと濃いめに味付けすりゃ、酒との相性もいいだろうし。
煮物ならオレの晩飯にもなる。
ってことで、メニュー決定。

とりあえず、材料と鍋、包丁なんかを一通り用意して。
あとは、邪魔になる髪を一つにくくったら準備オーケー。
さあ、はじめよう。

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