幸せの軌跡

□第7話 想いのカケラ
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とりあえず昼飯を食おうと食堂に足を運ぶと、そこはもう戦いのあとで、ほとんどの席が埋まっていた。
なんとかどこか座れる場所を探そうと目を泳がせると、

「あ、センセー!」
「こっち座りませんか〜?」

うちのクラスのお騒が…いやいや元気っコ三人娘が、こっちに向かって手を振っていた。
明らかに俺を呼んでいる。
一見華やかで嬉しい光景のようだが、その実そこは恐ろしい魔窟であると、クラスの全員が知っている。
だからといって、ご一緒しておかないとそれはそれで後がこわい。
仕方なくそこへ足を向けた。

「ほんじゃ、お邪魔しますよっと」
「どうぞどうぞ〜」

ニヤリと笑って椅子をひく、イリア・アニーミ。
その笑顔に、正直イヤな予感しかしない。
可愛い女の子たちに囲まれての昼食。
楽しいはずなのに、常に警戒を解けない。

くりくりとした瞳で右斜め下から覗き込むようにこちらを見つめているのは、マルタ・ルアルディ。
その視線に言い得ぬものを感じ、正面を向いてとりあえず湯飲みに手を伸ばす。

「あのぉ、先生って〜」
「んー?」
「カノジョとかいないんですか?」
「ぶっ!」

そして、その直後投下された爆弾により、口に含んだばかりのお茶を吹いた。

「先生きったなー」

ケラケラと笑うはノーマ・ビアッティ。
軽〜くデコピンをかますと、何がそんなに面白いのか更に笑い声を上げた。

心を落ち着けて三人を見渡すと、好奇心に満ちた視線がそそがれていた。
そりゃ高校生だもんねー、色恋沙汰気になるわよねー。
だからってなんで俺に話を振るかなぁ。
こんなおっさんの話なんて聞いてもつまんないでしょうに。
そういうのはお友達としなさいよ、と思ったけど。
この手の話は、一応でも答えておかないといつまで経っても終われない。

「ねー、いないのー?」
「いないわよ、悪かったわねー、いい歳して独り身でー」
「えー、ホントにー?」

ナンデスカ、その疑いの眼差しは。
諦めるどころか、よりいっそう気合いが入っているようにも見える。

「じゃ、好きな人とかは?」
「なかなか粘るわね」
「だって気になるもん」

今度は反対側のイリア。
両サイドから期待を込めて見つめられ、身動きが取れない。
こりゃ、お手上げだわね…。

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