幸せの軌跡

□第7話 想いのカケラ
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「どうなの?どうなの?」
「どうなんですかっ?」
「それは……まぁ、いる、けど」

身を乗り出し、急き立てるその声に圧され、少し考えてからぼそり、と呟く。

「ほらっ、絶対いるって言ったでしょ!」

マルタは、パッと顔を輝かせて今までよりも更に身を乗り出した。
そして、一人が声を上げれば、当然続けて声が上がる。

「どんな人ですか!?」
「どうせ美人でボインのオネーサン、とかじゃないの〜?」

キャッキャッと盛り上がる三人娘。
だが、俺の耳はすでに彼女たちの会話を拾ってはいなかった。

"好きな人"そう言われてすぐに浮かんできたのはもう見慣れた黒髪。
そう、口にしてみてようやくはっきりとわかる、自分の気持ち。
俺は、ユーリが好き、なのよね。
最初は可愛いな、仲良くなっといたら得するかな、くらいの気持ちだったんだろう。
でも、色んなユーリを見るうちに、いつの間にか本気にさせられてたみたい。
だって、こんなにも今、ユーリのことを考えてしまうのだから。

「――せ、せんせー聞こえてるー?」
「顔、ニヤケちゃってるよー?」
「え、いや、ちょっと、ね」
「えー、なんかヤラシー」

はっと意識を戻すと、目の前には楽しそうにニヤニヤと笑う三人の顔があった。
なんていうか、おっさんもしかして今かっこ悪い?
ってことで、それを誤魔化すように笑って、更に追求しようとする三人を止めにかかる。

「ほらほら、バカなこと言ってなくていいから早く教室戻んなさい。昼休み終わるわよ」
「あ、ホントだ」
「ヤバいヤバい〜」
「じゃあ、また今度話聞かせて下さいね〜」

時計を示しながらそう言うと。
三人は口々に何かを言いながら、まるで嵐のように、あっという間に去っていった。

「まったく…」

そんな彼女たちを見送った後、小さくため息をついて席を立つ。
ついもれたため息は、彼女たちに向けたものか、自分に向けたものか。
どうせ答えはわかってるのに、往生際が悪い。
あーあ、ヤバいなぁ、これ。
自覚しなきゃしないで、楽だったのに。
もうはっきりと自覚しちゃったもんは、どうしようもない。

『そろそろ本腰入れてアプローチしたほうがいいのかしら』
【いや、ダメでしょ、ドン引きされるって。だってほら、出会いがあれだし】
『でもでも、最近はちょっとずつ距離が縮んでると思うんだけど』

職員室に戻りながら、そんな脳内会議を繰り広げる。
それから、今日は青年帰り早かったかしら、なんてことを考えて。
次にユーリに会えるときを思い、軽く胸を弾ませた。



ふいに見つけた


想いのカケラ


君に届きますように



To be Continued...



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