幸せの軌跡
□第7話 想いのカケラ
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ふとしたとき
気になるのは
クールで可愛い君のこと
幸せの軌跡
第7話
―想いのカケラ―
「は〜い、じゃあ今日はここまで」
授業の終わりを告げた途端、今までの静けさが嘘のような喧騒が訪れた。
もう誰も話を聞いているとは思えない。
「ちょ、ちゃんと課題やってきてよっ?」
「わかってまーす」
ホントにわかってるのかしら。
これから昼休みということもあって、教室内の活気は相当なものだった。
そんな元気いっぱいな生徒たちに苦笑をもらし、怪我をしないように注意を促してから。
荷物をまとめて廊下に出ると、ぴょこんと跳ねた髪が特徴的なうちのクラスのエミル・キャスタニエ君が暗〜い顔をして歩いているところに遭遇した。
「どしたの、少年」
「あっ、レイヴン先生」
ぽん、と肩に手を置き声をかけると、跳ねた髪を揺らして顔を上げる。
その腕には、教科書やら厚めの本やらが抱えられていた。
「どしたのよ、そんなにいっぱい」
「僕、みんなについていくの大変で…だから、少しでも多くできることをしなきゃと思って」
そう言って困ったように笑うエミル君からは、一生懸命さが感じられる。
「あー、なるほど。まあねぇ…こういうのは積み重ねだから」
「そう、ですよね」
「うん、少年は真面目さんだから、そのうちにうまくいくわよ。わかんないとこあったらいつでも持ってきていいから」
くしゃりと前髪を撫でてやると、嬉しそうに大きく頷いた。
「ありがとうございましたっ」
「はいは〜い」
ぱたぱたと駆けていくエミルを見送り、ふいにユーリはどんな高校生だったんだろう、なんて考えた自分に苦笑した。
こんなときまでユーリのことを思い出すなんて、どうかしてるよね、おっさん。
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