幸せの軌跡

□第7話 想いのカケラ
1ページ/4ページ



ふとしたとき


気になるのは


クールで可愛い君のこと



  幸せの軌跡
   第7話
―想いのカケラ―



「は〜い、じゃあ今日はここまで」

授業の終わりを告げた途端、今までの静けさが嘘のような喧騒が訪れた。
もう誰も話を聞いているとは思えない。

「ちょ、ちゃんと課題やってきてよっ?」
「わかってまーす」

ホントにわかってるのかしら。
これから昼休みということもあって、教室内の活気は相当なものだった。
そんな元気いっぱいな生徒たちに苦笑をもらし、怪我をしないように注意を促してから。
荷物をまとめて廊下に出ると、ぴょこんと跳ねた髪が特徴的なうちのクラスのエミル・キャスタニエ君が暗〜い顔をして歩いているところに遭遇した。

「どしたの、少年」
「あっ、レイヴン先生」

ぽん、と肩に手を置き声をかけると、跳ねた髪を揺らして顔を上げる。
その腕には、教科書やら厚めの本やらが抱えられていた。

「どしたのよ、そんなにいっぱい」
「僕、みんなについていくの大変で…だから、少しでも多くできることをしなきゃと思って」

そう言って困ったように笑うエミル君からは、一生懸命さが感じられる。

「あー、なるほど。まあねぇ…こういうのは積み重ねだから」
「そう、ですよね」
「うん、少年は真面目さんだから、そのうちにうまくいくわよ。わかんないとこあったらいつでも持ってきていいから」

くしゃりと前髪を撫でてやると、嬉しそうに大きく頷いた。

「ありがとうございましたっ」
「はいは〜い」

ぱたぱたと駆けていくエミルを見送り、ふいにユーリはどんな高校生だったんだろう、なんて考えた自分に苦笑した。
こんなときまでユーリのことを思い出すなんて、どうかしてるよね、おっさん。

.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ