幸せの軌跡

□第10話 謎の視線
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「で、なんなのよ、アレは…」
「そんなの、オレが聞きたい…」

が、話はすぐにヤツのことに移っていて。

「知り合いじゃないの?」
「そんなわけあるか。最近妙な視線を感じるな〜と思ってたんだけど、どうもアイツだったらしくて…」
「ちょ、それっていわゆるストーカーじゃないの!?」
「そうだな」
「そうだな、じゃな〜い!なんでもっと早く言わないの!?」

珍しく怒鳴ったおっさんは、オレの肩をぐっと掴んで顔を近づけた。
こんなおっさんは見たことがなくて、少し戸惑う。

「いや、そんな大したことだと思わなかったし」
「大したことでしょ!」

あーもう!とおっさんはガリガリと頭を掻いた。
かと思えば、はぁ、と深くため息をついて、

「ユーリ」
「んぁ?」
「携帯持ってる?」
「ああ」

携帯なんて何するんだと首を傾げると、

「番号とか教えてもらってもいい?」
「え」
「それとも、おっさんのこと、まだ信用できない?」

少し寂しそうにおっさんはそう言った。
別にもう、おっさんのことを信用ならないただの変態オヤジだなんて思ってない。
隣だからそれほど必要性を感じたことはなかったけれど。
むしろ、あれだけ話したり互いの部屋を行き来したりしてて今まで知らなかったことのほうがおかしいのかもしれない。
そんな風に思って。

「別にいいけど」

そう言うと、おっさんは嬉しそうに自分の携帯を開いてこっちに向けた。

「赤外線大丈夫よね?」
「ん」

促されるまま、同じように携帯を開いて通信開始。
そして、画面に無事情報が保存されたことが表示される。

「なんか変な気配とか感じたら、すぐ連絡すること!何かあってからじゃ遅いんだから!」

レイヴンは、やたらと真剣そうな顔をしてそう言い募る。
そんな様子を見て、とりあえず、すごく心配されてるってことはわかった。
この歳になって、ぐだぐだと言われるのはフレンのこともあって面倒だと思うことが多いけど。
身近にこうやって気にかけてくれる人がいる、ってのは悪くないと思う。

「気が向いたらな」

だけど、やっぱり素直にそれを口に出すのは躊躇われて、そっけなく答えると。
しょうがない子ね、とおっさんは笑った。

「じゃ、帰ろっか」
「ああ…って、おっさん」
「何?」
「この手はなんだ?」

いつの間にか、しっかりと手が握られていて。

「ほら、また例の子が現れたりしたときにすぐ逃げられるように…」
「いるか!バカ!」

更に力を込めようとする手を無理矢理振り払って、早足で前に出ると、おっさんはまた笑っていた。



なんだかんだ言って


意外と頼りになるってことは


まあ、認めてやるよ



To be Continued...



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