幸せの軌跡
□第12話 先生あのね
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「でもさ、むしろおっさん的には、なんでそれが気になるのか?のが気になるんだけどな」
「う…」
やっぱり見透かしてたのか、ホント狸だな、このおっさん。
この話はまだ人にしたことはない。
というよりも、明確な目標になったのは、つい最近だから。
「ユーリ、先生になりたいの?」
「興味は、ある」
「教職取ってる?」
「一応」
「そっか」
なんだよ、その嬉しそうな表情は。
しかも、いつもみたいな"ニヤニヤ"じゃなくて、綻ぶような笑顔。
そんな顔をされたら、どうしていいのかわからなくなる。
「教育実習は?」
「もうすぐ場所決める」
そんなオレの困惑を余所に、レイヴンは次々と質問を浴びせてくる。
「専攻は?」
「社会」
「じゃ、おっさんと一緒だ」
聞いてくることは的確で、本当にちゃんと段階を踏んで教師になって、その仕事を続けてるんだと感じることができた。
そして、その仕事に対する姿勢も、大切さも…。
やっぱり、聞いてみてよかった、かもしれない。
そんなことを考えていると、
「乾杯しよ、乾杯!」
「は?なんで」
「ユーリ君が夢を打ち明けてくれた記念♪」
ふいにそんなことを言い出し、パチン、とひとつウインクをしておっさんは立ち上がった。
かと思えば、
「ちょっと待ってね」
と言い残し、バタバタと部屋を出ていって…またすぐに戻ってきた。
その手には、酒らしいボトルとグラスが2つ。
「おっさん秘蔵のお酒なんだから」
「別にそんなの」
「いいからいいから」
嬉しそうに言いながらグラスに酒を注いだかと思うと、半ば無理矢理にそのグラスを握らされた。
「はい、カンパーイ!」
そして、やたらとハイテンションな掛け声とともにグラスを掲げる。
が、もちろんオレはついていけない。
すると、おっさんはこれでもかというくらいの笑顔を近づけてきやがって。
「カーンパイ?」
「か、乾杯」
仕方なく小さく呟いて、軽くグラスを合わせてやった。
「よしよし」
満足そうに笑いながら秘蔵の酒とやらを飲む姿は、さっきとはすでに別人で。
やっぱりただのダメオヤジかもしれないと思いながら、握らされたグラスに口をつけた。
けど、アンタの働く姿が
刺激になったんだぜ
秘密だけどな
To be Continued...
→次回予告