ユーリ受

□Trick and Treat!?
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こうなったら、正面突破だ!
下手な変化球よりは直球勝負のほうがユーリにはよく効くってことを俺様は半年ほどの付き合いの中で学んだ。
もう力押しするしかないでしょ!

あ、でもとりあえず保険としてお菓子は用意しておこう。
何かあったときにユーリを鎮める大事なアイテムだからね。

そんなわけで、しっかりと準備を整えたら帰宅。
いよいよ、計画実行のとき。

「……よし」

扉の前で深呼吸。
鞄から例のステッキを取り出し、準備OK!
そして、勢いよくドアを開いて家に飛び込み、"ただいま"よりも先に、決まり文句を叫んだ。

「Trick or Treat!!」
「………は?」

案の定、意味わかんねー的な顔で冷たい目を向けられる。
お勉強中だったのか、テーブルには本が広げられていて、そこに手を添えたままで固まってしまっていた。
顔だけをこっちに向けて、ひたすらに冷たい視線を注いでくる。
だけど、ここで怯んではせっかくの計画が台無しになってしまう。

「お、お菓子持ってないと悪戯されちゃうんだよ〜?」

両手をユーリに向かって広げる。
このとき、笑顔を崩してはいけない。
あくまでも、笑顔、無理矢理にでも、事を通す姿勢が大事だ。
意外と青年は押しに弱いところがあるから、その方が効果的なはず。

「…それで?」
「だから、ハロウィンよ、ハロウィン!」

未だに冷ややかなままの視線が痛いけど、精一杯明るく振る舞った。
ここまで来たら、あとには退けない。

「ハロウィン、ねぇ」
「ほら、これこれ」

ステッキに視線を感じ、それを半ば押し付けるようにユーリに手渡す。
すると、ユーリは物珍しそうにしげしげとそれを眺めた。
その様子はすごく微笑ましくて、つい口元が緩みそうになる。
でも、今は和んでる場合じゃない。
ユーリがステッキに気をとられてる今こそ、絶好のチャンスなんだから。

「とぅえいっ!!」
「っ!?」

一瞬の隙をついて、ユーリの頭に例のブツをかぽっとはめた。
ユーリは、一瞬なにが起こったのかとポカンとしていて、すごく可愛い。

「わっ、ユーリ超かわい」

そう口にしかけた、その瞬間。


ブリザードが吹いた。


「ひぃッ!?」

前髪で目元が隠れていてよく見えないが、口元は歪んでいて、明らかに怖い表情になっている。

「おっさん、なんのつもりだ?」

ニコッと微笑むユーリ。
普段は見られない、満面の笑顔が怖い。
怒ってる、確実に怒ってる。
笑いながら怒ってる!

「あ、いや、その…えっと」

笑顔の怒りが一番怖いということは、経験上よーく、身に染みてわかっていることだった。
空気のあまりの冷たさに、うまく言葉が出てこない。
考えていた台詞も全てどこかへ吹っ飛んじゃったみたい。

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