ユーリ受

□Trick and Treat!?
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「これが悪戯、か?」
「あ、あは、あははははは…」

乾いた笑いしか出ない。
どうしよう、どうしようって言葉が頭の中をぐるぐる回って。
どう言ったら許してもらえるだろうかと必死に考えを巡らせていると、

「ぷっ」
「…え?」

ユーリが小さく吹き出すのが聞こえ、顔を上げる。

「いや、またくだらないことするなと思って」

ユーリはくすくすと笑いながら、言葉を続ける。

「おっさんらしいけどな」

何がそんなにおかしいのかわからなくて、「え?え?」と漏らすのが精一杯だった。
それでもユーリは話すことをやめずに続ける。

「まぁ、ネコミミとかウサミミとか持ってきたらさすがにあれだけど」

そして、こんなツノくらいなら別にかまわねーよ、と可笑しそうに笑った。

なかなか展開に頭がついてこなかったけど、ユーリの笑顔にだんだんと冷静さが戻ってくる。
そして、数秒の間をおいて、状況を理解した。
どうやらおっさん、逆に"悪戯"されちゃったみたい。

「ひ、ひどいっ!おっさん本気でヒヤヒヤしたのに!」

憤慨を全身で表現してみたけれど、

「最初になんかしようとしたのはそっちだろ?」

自業自得だ、と言うユーリに反論ができず、ぐっと詰まる。
まさかこんな展開になるなんて夢にも思ってなかった。

「うぅ〜、不覚!でもぉ、ちょっと嬉しい、かも〜?」

心内語がだだ漏れになっているのにもすぐに気づけないくらいに動揺しちゃったわけで。
これからどうしようかと新しい計画を練りはじめると、ユーリが一つ咳払いをした。
それにつられて顔を上げると、

「Trick or Treat?」

ニヤリと口元を歪めながら、ユーリが言う。
完全にお株を奪われて、おっさん形無しよ。
だけど、こういうのも悪くない。

「トリートで!」

とびっきりの笑顔で、そう答えた。
そして、用意してきたお菓子の箱を渡すと、青年は例によって例の如く、嬉しそうに蓋を開ける。

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