幸せの軌跡

□第17話 デートをしよう
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とりあえず、新しく出来たショッピングモールに向かうことにした。
そこなら、話題には事欠かない程にたくさんの店舗が連なってるから。

特に目的は考えないで、雑談しながらふらふらとお店を見てまわる。
ふと、目に入ったレトロなお店に、二人で足を止めた。

「駄菓子屋さんなんてあるのね」
「へぇ、懐かしいな」

互いに懐かしさについ目を細める。
所狭しと並べられている駄菓子の数々は、どれも在りし日を彷彿とさせるものばかりだった。

「青年もこーゆーの食べたんだ」
「そりゃな。別に驚くことじゃないだろ」

確かに青年の言う通りではあるんだけど、やっぱりちょっと嬉しくなったりして。
我ながら単純だなぁと思う。

並んでるのはもちろん駄菓子だけじゃなくて、懐かしいおもちゃなんかも見える。
その中からひとつ、よくある鼻眼鏡を手に取ってかけてみせた。

「どうどう?」
「ぷっ、おっさん似合いすぎ」

小さく吹き出したあと、肩を震わせて笑うユーリ。
その楽しそうな表情が見れただけで幸せな気持ちになった。

そのあとも本やら服やら雑貨やらを適当に見て回った。
今まで知らなかったユーリの好みや趣味がわかって、それだけでも十分な収穫と言える。
お昼を食べてまたふらふらして、ただそれだけなのに飽きることはなかった。

「ユーリ?」
「………」

ふいに立ち止まったユーリの視線の先を追うと、そこには女の子たちの列。
ここからでも甘いにおいがわかる。

「食べたい?」
「…べ、別に」

ユーリはふいっと顔をそむけたけど、気になってるのがバレバレ。
なのに、頑なにそっぽを向く。

「はぁ…」

ユーリには聞こえないように、小さくため息をついた。
前から気づいてたことだけど、青年はどうにも他人に甘えるってことが苦手らしい。
たぶん、どちらかというと甘えられる側、頼られる側なんだろう。
面倒見いい、兄貴肌っぽいもんね。

それはもちろんユーリのいいところなんだとは思う。
でも、やっぱり甘えて欲しい、って思っちゃうわけで。

「ご馳走するから、好きなの食べなよ」
「いい、さっき昼飯も食わしてもらったし」

案の定、即答で断られた。

「せっかくのデートなんだから、そのくらいさせてもらわないとおっさん立つ瀬ないでしょ〜」

けど、そのくらいで引き下がったりしない。
大人の立場をアピールして、何回か同じやりとりをすると、ついにユーリが折れた。

「…じゃあ、食べる」

そのときの表情が可愛くて、ついよしよしと前髪を撫でると、ばっと手を払われる。
ちょっとだけ、青年の頬が赤いのはきっと気のせいじゃないよね。

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