幸せの軌跡

□第17話 デートをしよう
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「どれがいい?」
「……あれ」

少し考えるように目を滑らせたあと、すっと指差したのは、一際大きな一品。

って、ちょ、ユーリ君!?

ユーリが選んだのは、一番値段の高いやたらと豪華絢爛なクレープだった。
驚いて、ユーリを振り返ると、「ざまぁ見ろ」と言わんばかりの悪戯っぽい笑顔を浮かべていて。

青年、なかなか手強いです。

「ありがとうございました〜」
「はい、ユーリ」
「サンキュ」

列に数分並んで無事ゲット、それを渡すとユーリは嬉しそうに笑った。
そんな顔するなら最初から食べたいって言えばいいのに。
そういうとこも可愛いんだけどね。

「ど、おいしい?」
「ん」

近くのベンチに腰を下ろすよりも早く食べはじめていたユーリの顔を覗き込む。

「おっさんにも一口ちょうだい?」
「ん…ほらよ」

差し出されたクレープにかぷりと食らい付く。
口の中にクリームの甘さが広がった。

「こーゆーのやってみたかったのよ」

と、小さく舌を出して笑うと、ユーリはちょっと目を見開く。
ついでに、ユーリの口の端についているクリームを指でとって、ペロリと舐めてみせる。

「ばかっ、ここ外だぞ!」

すると、その状況の恥ずかしさに気づいたらしく、またふいっと顔を背けてしまった。
そんな様子も、やっぱり可愛いなと思う。

だけど、意外と人間、他人のことなんか気にしていないものだ。
その証拠に、今だって特にイヤな視線を感じたりはしない。
まぁ、気になるって気持ちはわかるけどね。

「大丈夫だからイチャイチャしようよ〜」
「しねーよ。つか、オレはまだ認めてないんだからな」
「わかってまーす」

そう、わかってる。
だけど確実に距離は縮んでるから、今はこれで満足。

まだ不満そうな顔をするユーリににっこりと笑いかけながら、幸せを噛み締めた。



二人一緒にいるだけで


こんなにドキドキするなんて


まるで初恋みたいよね



END



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