幸せの軌跡

□第19話 君のためにできること
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なんて無用心な。
気をつけて、って再三言ってるのに、困った子だ。

「お邪魔しますよ〜?」

いるにしろいないにしろ、一応断っておかないと。
そして、真っ暗なままの部屋の奥へと進んでいく。
あまりの静けさに胸の奥がざわつく。

「ユーリ?」

部屋の奥に目を凝らすと……ベッドに寄りかかって座っているユーリがいた。
なんだ、いるんじゃない。
と、ホッとしたのは一瞬。

「ユーリ?」

もう一度呼びかけて、顔を近づけて異変に気づく。
微かに呼吸が乱れていて、顔も赤い。
ぴたり、とその額に手を当てれば、

「…っ!」

その肌は明らかに熱い。
眠っている、んじゃなくて倒れている、そう言った方が正しい状態だった。

体をそっと抱き上げて、ベッドに下ろし、布団をかける。
ホントはすぐに着替えもさせてあげた方がいいのかもしれないけど、それはなんか色々と自信がないから後回し。

とりあえずまずは水分だろうか。
あと、冷やして少しでも熱を下げないと。

開けますよ〜?

一応心の中で断ってから、冷蔵庫を開けて中をチェックする。
きれいに整理整頓された冷蔵庫。
お茶とミネラルウォーターのペットボトルが1本ずつあるから、飲み物の心配はなさそうだ。

あとは薬があってくれるといいんだけど…ユーリは普段から健康そうだから常備薬はあんまり期待できそうにない。
一応、棚やらに目を凝らして探してはみたけど、それらしいものは見当たらなかった。
うちにもあったかどうかはちょっと怪しい。
胃薬かなんかはあった気がするけど、風邪薬や解熱剤は自信がなかった。

それに、薬を飲ませるなら、何かしら口にさせなきゃならない。
とすれば、やっぱり一度買い物には行かないといけないことになる。

「ユーリ?」

ベッド脇に戻り、声をかけてみるけれど、返事はない。
まぁ、今は無理に起こさないで、眠らせてあげたほうがいいだろう。

「鍵、借りるからね?」

聞こえないだろうとは思いつつ、一応声をかけて、テーブルに投げ出されていた鍵を取る。
急いで部屋を出て、向かう先は近くのコンビニだ。
本当ならスーパーまで行った方がいいんだろうけど、それだと少し遠いし、時間も遅い。
今はできるだけユーリを1人にはしたくなかった。

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