幸せの軌跡

□第19話 君のためにできること
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コンビニに駆け込み、店内に目を走らせる。

熱冷ましシートみたいなやつと、風邪薬と…。
なんか、食べやすそうなもの…
あと、スポーツドリンク?

頭をフル回転させ、すばやく目的のものを手に取り、会計を済ませた。

で、行きも帰りも全力ダッシュ。
年とかそんなことは言ってられなかった。

ユーリ宅に戻ったら、まずは食事の準備。

用意を整えたら、すぐにユーリの元に向かう。
熱冷ましシートをおでこにぺたっと貼ると、冷たかったのかユーリは小さくみじろいで目を開けた。

「ユーリ」
「…っ、おっ、さん?」

呼びかけると、半覚醒のうつろな目がゆっくりとこっちへ向けられる。

「大丈夫?」
「…へい、き」

嘘つき。無理しちゃって。
苦しそうに小さく答えたユーリに、心の中で呟いて、

「お粥あるから、ちょっとだけでも食べられる?」
「ん…食う」

小さく頷いたのを確認してキッチンに向かい、用意してあったお粥を持ってユーリの元へ戻る。

「はい、あーん」
「………ん」

一口分掬って差し出すと、ゆっくりと口を開け、ぱくりとそれを口に含んだ。
普段なら即拒絶されそうなことなのに、弱ってるからか、ユーリはすごく素直で。
されるがままに、一人前のお粥を完食してくれた。

食欲は思ったよりあるみたいで安心する。
そのあとには薬も飲ませたから、あとはゆっくり眠るのが一番。

自分のせいでこんな状態になってしまったのかもしれないと思うと、胸が痛くなる。
なんて言うと「自惚れんな。ただの風邪だろ」って言われちゃいそうだけど。
でも、そんな風に思うと同時に、ちょっとだけ嬉しくもあって。

「…なに、笑ってんだよ」
「なんでもないわよ」

ちょっと不機嫌そうな表情をしたユーリを諌めるように、くしゃくしゃと髪を撫でると、くすぐったそうに肩を竦める。

「ほら、いいからもう寝なさいな」
「ああ…」

最後にユーリの長い髪を軽くすいてから、ゆっくり身体を倒して布団をかけてやる。

「…さんきゅ、おっさん」

すると、布団の中からちょっとこもった声が聞こえて、

「おやすみ、ユーリ」

ユーリの口元を隠している布団を軽くぽんっと叩いて、笑った。
今夜は、このまま側にいてもいいかな、なんて思いながら。



弱った君も可愛いけれど


やっぱり君にはいつも


元気で笑って欲しいから



To be Continued...



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