幸せの軌跡
□第26話 愛する資格
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大切な人を
守るのは
騎士の役目なり
幸せの軌跡
第26話
―愛する資格―
ユーリが突然僕の部屋に転がりこんできてから、一週間ほどが経った。
今はもうユーリがいることにも慣れてしまったけれど。
あのときはやっぱりびっくりしたなぁ。
いきなり電話がかかってきて「今から行ってもいいか」って。
しかも来たかと思ったら、予想外の大荷物。
何事かと目を瞬かせる僕を前にして。
「しばらくここにおいてくれないか」
それは申し訳なさそうにそう言ったユーリは、力なく笑う。
断るなんて、当然できるわけがない。
なるべく迷惑はかけないようにするからさ、と続ける姿は痛ましくさえあった。
本人は笑っているつもりなのかもしれないけど、僕にはそうは見えなくて。
本当はすぐにでも問い詰めたかった。
「ユーリなら大歓迎だよ」
でも、どこか深入りを拒むような空気を感じて、僕は笑顔で答える。
今は、それがユーリのためになると思ったから。
ユーリはいつも多くを語ってはくれない。
相手を信用してないとかじゃなくて。
相手に心配をかけないように、自分の中に全部を留める。
それがユーリの優しさであり、強さであり、弱さでもあった。
そして、その優しさはいつも僕の心を締め付けていた。
もっと頼って欲しい、と切に願っていた。
そんなユーリが、自分から僕を頼ってきたんだ。
それは今回のことがユーリの心にどれだけのダメージを与えているのかを如実に語っていた。
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